矢野経済研究所は,2018年のユーザーインターフェース(UI)デバイスの調査を実施し,指紋センサー世界市場規模推移と予測,需要動向,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。
これによると,スマートフォンやタブレット等の中小型モバイル端末を中心に,指紋や顔,虹彩,音声等の生体情報を利用したユーザー認証機能の搭載が進んでいる。特に,指紋認証は指を置くだけでロック解除が出来るという優れた利便性を持ちながら,セキュリティ強化が実現できることから,スマートフォンでの採用が拡大している。
中小型モバイル端末向け指紋センサー市場はここ数年拡大を続けており,2017年の指紋センサー世界市場(メーカー出荷数量ベース)は前年比133.3%の11億1,150万個まで拡大した。今後も,スマートフォンの標準仕様としてミドル・ローエンド品への搭載が進むほか,PINコードを入力する代わりに,指紋で生体認証を行なうことで,支払いが可能なICカードの利用も広がる見通しで,2018年以降も指紋センサー世界市場は拡大が続くと予測する。
指紋認証は指紋センサーに接触させることで指紋画像を安定的に取得できることや,指紋認証デバイスを低コストで搭載出来ること等から,スマートフォンの標準仕様として引き続き拡大していく見込み。一方で,従来のボタン式とは異なり,中小型モバイル端末のデザイン性の向上に貢献できるディスプレー埋め込み型指紋認証デバイスの開発も今後進展するとみられる。
この場合には,デバイスメーカーにはディスプレーメーカーとの協業が必須条件となり,今後,協力関係の構築が最も重要になってくると考えられる。また,中小型モバイル端末向け以外の用途では,今後ICカードへの搭載が進む見通し。クレジットカードに指紋センサーを搭載し,指紋をスキャンするだけで,迅速かつ便利でありながら高い安全性が確保できる決済ソリューションとして利用拡大が期待される。
2020年の指紋センサー世界市場(メーカー出荷数量ベース)は15億7,670万個に成長すると予測する。指紋や顔,虹彩,音声等の生体認証技術を利用したユーザーインターフェイスはパスワード忘れや盗難,紛失リスクの心配もないことが最大のメリットであり,今後,スマートフォンなどの中小型モバイル端末向けでの搭載はよりいっそう広がっていく見通し。
しかし,生体情報を利用したユーザー認証機能は現段階では一定以上のセキュリティが確保されているものの,安全性が完全には担保されておらず,生体情報の偽造や流出の危険性は依然として存在する。
特に,スマートフォンを利用したモバイル決済等,ICTと金融が融合したフィンテック(FinTech)が日常に浸透するなかで,スマートフォンのセキュリティの重要度は益々高まっており,今後,生体認証デバイスの更なる精度向上や認証システムの高度化による端末のセキュリティ強化は消費者がスマートフォンを購入する決め手の一つになると考えられる。
また,指紋や顔,虹彩,音声等の生体認証技術はボリュームゾーンの中小型モバイル端末の他,銀行のATM端末,空港の出入国管理システム,民間企業の入退室管理システム,防犯カメラ等各種インフラ機器への採用が広がっている。生体認証技術は新たなユーザーインターフェースシステムとして,機器採用を左右する基幹技術になっていくと考えられる。
中小型モバイル端末での新たなソリューション提案も含めて,今後どういったアプリケーションが立ち上がってくるかをウォッチしておくことで,次に来るであろう需要の波をつかむことがデバイスメーカーに求められるとしている。