2020年次世代植物工場市場,2017年比4.6倍の165億円超に

矢野経済研究所は,高機能・高付加価値型「次世代植物工場」世界市場の調査を実施し,高機能・高付加価値植物(遺伝子組み換え植物,生薬植物,機能性野菜)の動向及び主要企業・研究機関の動向,それらを踏まえた世界市場の将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。

それによると,植物工場は,栽培環境を制御することで植物の生育をコントロールできることから,植物が本来持っている機能性成分を高濃度化,または高含有化することができる。また,栽培環境の最適化により,機能性成分の含有量や品質のバラつきを抑えながら,年中安定生産できる点も特長だという。

一方で植物工場は,概してイニシャルコスト(初期投資)とランニングコスト(運営・管理維持費用)共に高額となる。そのため一般的なレタス類の生産コストは高く,露地物と販売価格において競合するには,超大型植物工場でないと見合わないのが現状だとする。

こうしたなか,中小規模の植物工場のなかには,採算性改善を考慮し,栽培植物(遺伝子組み換え植物,生薬植物,機能性野菜)の高付加価値化を図るところが増えているという。

そのため,日本を始め,世界各地において高機能・高付加価値植物として遺伝子組換え植物や生薬植物,機能性野菜を植物工場で生産するための取り組みが活発に行なわれている。このうち機能性野菜については,摂食で生活習慣病の改善や予防が期待されるなか,生鮮野菜や健康補助食品として販売が徐々に拡大している。

一方で,遺伝子組換え植物や生薬植物は,実用化がもたらす影響が大きく,高い潜在需要を有するものの,栽培技術の構築や販路の開拓,生産コストなどにおいて解決すべき課題が多く存在する。現在抱えている課題をいかに早く解決できるかが今後の市場拡大には重要であるとしている。

次世代の高機能・高付加価値型植物工場市場が本格的に立ち上がり期を迎えるのは,遺伝子組換え植物を利用した複数のヒト用・動物用ワクチンの実用化が実現する2020年になると見込まれ,同年における世界市場規模(遺伝子組み換え植物,生薬植物,機能性野菜)は出荷金額ベースで165億5,300万円になると予測する(遺伝子組換え植物は宿主植物ではなく,有用物質を製品化した当該製品の出荷金額ベース)。

2020年以降も生産量では機能性野菜が依然として大半を占めると見込むものの,金額では高価なバイオ医薬品などに用いられる遺伝子組換え植物が市場拡大を牽引していくと見ており,2025年の世界市場規模(同)は出荷金額ベースで1,618億9,500万円になると予測している。

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