東北大学は,独自技術であるバイオテンプレート技術と中性粒子ビーム加工技術を融合して高均一・高密度・無欠陥の直径10nmサイズの均一で高密度な間隔制御された無欠陥シリコンナノピラー構造を作製することに成功し,その表面状態や間隔・深さを制御することで世界で初めて表面の濡れ性を親水から撥水まで自在に制御することに成功した(ニュースリリース)。
撥水の研究は,建設資材,化粧品,繊維処理,エレクトロニクス,光学機器,通信機器(ミリ波レーダーシステム),エネルギーデバイス(燃料電池)などの産業分野でも極めて注目を集めている。撥水性を決める要因は,主に固体の表面自由エネルギーと表面の微細構造等がある。
但し,コーティング等の表面自由エネルギーだけの制御では超撥水性を実現することが難しく,撥水性の制御を実現するためには表面微細構造が必要になる。現在,その最有力な手法として,ボトムアップ技術とトップダウン加工技術の融合(プロセスインテグレーション)が注目され,多くの提案がされつつある。
今回,研究グループはバイオテンプレートと中性粒子ビームエッチングを組み合わせることで,世界で初めて直径10nm以下のSi,Ge,GaAs,GaNあるいはグラフェンの超低損傷・高アスペクトエッチングを実現することに成功した。バイオテンプレートとは,金属微粒子を内包した生体超分子の自己組織能を用いて生体超分子を半導体基板上に配置し,そのナノサイズの金属微粒子をテンプレート(マスク)にする手法。
さらに間隔や表面状態を制御して作製した無欠陥シリコンナノピラーの表面濡れ性を,接触角を用いて測定したところ,表面を酸化した場合には超親水性を示し,表面の酸化膜を除去した場合には高撥水性を示すことを確認した。
この手法で作製したナノ構造をあらゆる材料表面に展開することで,水分や汚れの付着で性能を劣化させる通信機器,光学機器,レンズ系などに展開でき,耐久性や信頼性に問題があり,自在な濡れ性制御が不可能な表面コーティング技術に代わる技術であることが分かったという。
研究グループは今回の研究により,このナノピラーアレイ構造が,従来困難であった均一なサイズのナノ構造を数十nm間隔で均一かつ高密度に材料を問わず形成できることから,あらゆる材料表面の濡れ性の自在制御を実現できる構造として極めて有望だとしている。