広島大学,東京大学,名古屋大学,早稲田大学ら,日本とスウェーデンのPoGO+(ポゴプラス)国際共同研究グループは,ブラックホール連星系である「はくちょう座X-1」からの硬X線放射の偏光観測を実施した(ニュースリリース)。
この際,これまで技術的に観測が困難とされていたX線やガンマ線の偏光観測を直径100mにも膨らむ気球にゴンドラを搭載して実現し,硬X線の帯域において世界で初めて信頼性の高い偏光情報を得ることに成功した。
この結果,「はくちょう座X-1」において,恒星からブラックホールに吸い込まれている物質は相対論的な効果を強く受けておらず,ブラックホールまで約100kmの位置から内側では広がった幾何構造をしていることが明らかになった。
従来の時間変動(測光)やエネルギー(分光)の観測だけでは,物質の幾何学的な構造がブラックホールの近傍では広がっているのか,コンパクトな状態で存在しているのかの判断が困難だったが,今回,硬X線の偏光観測に特化した検出器での偏光観測という新しい手段によって,前者であることが強く支持されることになるという。
今後は,改良した気球実験や人工衛星のX線偏光の観測結果,理論研究から,様々な質量のブラックホール(太陽質量の数倍から100億倍もの超巨大サイズ)において,ブラックホールに吸い込まれつつある物質が重力の影響をどのように受けているが明らかにされ,中心に存在するブラックホールの特性(自転速度)やブラックホールが及ぼす相対論的な効果(時空のゆがみ)などの理解が進むと期待されるとしている。