東京理科大学と積水化成品工業の研究グループは,世界で初めて半球ポリマー微粒子の赤道面のみに金属製膜したヤヌス粒子を作製し,その特異な光・電場・磁場応答を明らかにした(ニュースリリース)。
「ヤヌス粒子」とは,その名称が2つの顔を持ったローマ神に由来する,2つ以上の異なった物理・化学的性質を持った表面・形状で構成される粒子のこと。この赤道面にのみ金属製膜した半球粒子は,空気-水界面で半球粒子を同じ向きに配向させて並べる汎用性の高い簡便な技術の開発によって実現した。
こうして作製した直径2.5μmの金属コート半球ヤヌス粒子の光応答を1個1個調べ,金,銀を赤道面(以下すべて赤道面に製膜)に製膜した粒子1個のクレッチマン配置により,金,銀の表面プラズモン共鳴の観測(p偏光反射スペクトルの共鳴ディップ)に成功した。
これは,粒子の向き(後述のように電場,磁場で制御できる)によって異なる光応答(正負の走光性など)を示す光駆動粒子や規則正しく配列させることによるメタマテリアルなどの応用可能性があるという。
また,水中の銀コート半球ヤヌス粒子の電場応答を調べたところ,交流電場を印加すると粒子は赤道面が電場に平行になるように配向することを実証し,銀コート半球ヤヌス粒子懸濁水が,粒子の赤道面での高い光反射率により,交流電場のオン/オフで透過/反射をスイッチできる光シャッターとして働くことを示した。
さらに,強磁性体であるニッケルをコートした半球ヤヌス粒子の磁場応答を調べたところ,粒子は定常磁場を印加すると赤道面内で磁化することで鎖状に自己組織化し,その懸濁水が磁場の向きでスイッチする光シャッターとなることを示した。
最後に,ニッケルコート半球ヤヌス粒子の交流電場と定常磁場を同時に印加したときの応答を調べ,半球粒子の3次元配向を電場と磁場で完全制御できる(電場ベクトルと磁場ベクトルで決まる平面に赤道面が平行になり,磁場を反対向きにすると反転する)ことを実証した。
この高い制御性と半球形状を併せ持つことで,マイクロオプティクスおよびマイクロ流体の分野において幅広い用途が見込まれるとする。この作製法はサイズ,コートする面,コート物質の種類,そして粒子の異方形状(半球以外でも可能)を選ばず,さまざまな種類のヤヌス粒子作製に適用できるとしている。