京都賞,メタマテリアルでジョン・ペンドリー氏受賞

稲盛財団は,2024年度の「京都賞」3部門の受賞者3名を決定した(ニュースリリース)。

本年度の受賞者は,先端技術部門ではメタマテリアルの研究でジョン・ペンドリー氏(英インペリアル・カレッジ・ロンドン 理論固体物理学教授),基礎科学部門ではポール・F・ホフマン氏(加ビクトリア大学客員教授,米ハーバード大学 スタージス・フーパー地質学名誉教授),思想・芸術部門ではウィリアム・フォーサイス氏(振付師)にそれぞれ決定した。

通常,物質の電磁気的特性を人工的に設計することは困難だった。受賞者のジョン・ペンドリー氏は,対象とする電磁波の波長より小さな構造体の設計により,自然界に存在しない,特異な電磁気的性質を持つ物質(メタマテリアル)が実現できることを理論的に示した。

具体的には,微小な構造体の電磁波に対する共振状態を用いて,金属細線格子からなる材料で負の誘電率を,また非磁性導電体のリング状構造を持つ材料で負の透磁率を実現できると明らかにした。さらに細線格子とリング状構造の両方で構成される材料では,負の誘電率と負の透磁率の両立が可能なことを示した。

誘電率と透磁率が共に負値を示す物質が負の屈折率を持つことは予見されていたが,同氏の理論に基づき,負の屈折率を持つメタマテリアルが実験的に実現された。その概念は,材料の特性制御に新たな可能性を拓いた。例えば,負屈折材料では,界面での屈折波が入射波の逆方向に進むなど,特異な性質を示す。

同氏はこうした性質を利用し,回折限界を超えた,理想的には無限の解像度を実現できる「スーパーレンズ(完全レンズ)」を提案し,現在,このレンズを使用したさまざまな開発が進められている。

また,マクスウェル方程式における座標変換を用いて,電場,磁場,エネルギー流の軌跡を制御する「変換光学」を提要した。この概念は光学素子の設計自由度を格段に向上させ,多くのメタマテリアルデバイスの設計に適用されている。特に,「透明マント」の提案は大きな注目を集めている。

このデバイスは,光を遮蔽したい領域を巧みに迂回させ,元の軌跡に戻るよう導くことを実現するもの。実際に同氏は実験グループと共にマイクロ波帯域でこの性質を持つ材料を実証している。

これらの研究成果を契機に,2000年代初頭からメタマテリアルの研究は進展し,現在では音響などへも応用が進んでおり,今回,その理論的研究が高く評価された。

「京都賞」は1984年に創設され,科学や技術,思想・芸術の分野に大きく貢献した方々に贈られる日本発の国際賞で,3つの部門の受賞者には,メダルやディプロマのほか賞金1億円が贈られる。

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