国立天文台は,太陽観測衛星「ひので」の可視光望遠鏡による観測データから,太陽観測史上最大となる6,250ガウスの磁場強度を持つ黒点を発見した(ニュースリリース)。
研究グループは,「ひので」可視光望遠鏡による偏光分光データから,黒点暗部内に存在する明るい構造上で暗部よりもはるかに強い磁場を持つ構造を発見した。その磁場強度は 6,250ガウスで,これほど明解に大きな磁場強度を示す分光データは世界初。さらに水平成分は6,190ガウスで,これほど強い水平磁場も報告例がなかった。
これは一般的な黒点磁場の2倍の強さであり,さらには強磁場を示す領域が黒点内の暗くない部分(暗部以外)に位置するという特異な性質を持つ。これまでにも暗部以外で局所的に強い磁場が観測されることは時々あったが,その成因については全くの謎だった。
今回、「ひので」の5日間に渡る安定した連続観測により黒点の発展過程が詳細に捉えられ,その結果,この強磁場は黒点暗部から伸びるガスの流れが別の暗部を強く圧縮することで生じていると結論付けた。この成果は,高い解像能力で長時間安定して磁場測定を行なうことのできる「ひので」でなければ成し得ないもの。
強磁場の起源やその振る舞いは,フレアや黒点形成,ガスの噴出,コロナ加熱などにも大きく関わっており,この研究の成果は今後の観測や数値シミュレーションを通じて,太陽活動現象の理解をさらに深めるものだとしている。