東北大学,東京大学,物質材料研究機構らの研究グループは,シリコンカーバイド(SiC)上のエピタキシャルグラフェンにおいて,走査トンネル顕微鏡(STM)による電流測定に現れるフォノンのシグナルの空間依存性を高精度に測定し,SiC基板とグラフェンの界面に潜む低エネルギーフォノンの存在を明らかにした(ニュースリリース)。
SiCの熱分解によるエピタキシャルグラフェン形成は高品質なグラフェンを絶縁体基板上に作成する方法として着目されているが,グラフェン中での電子移動度が理論値よりも大幅に低下するという問題があった。
電子移動度が下がる重要な原因の一つに,基板とグラフェンの界面に存在するフォノンがある。しかし,界面のフォノンを観測することは非常に難しく,その詳細は明らかになっていなかった。
今回の研究では,トンネル電子がフォノンと衝突することによってエネルギーを失う非弾性過程の空間依存性を測定するSTM実験と,界面構造と電子・フォノン状態の相関を第一原理計算によって明らかにすることによって,ダングリングボンドを持ったシリコン(Si)原子によって特徴的な界面フォノンが生じていることを解明した。
この研究成果により,電界効果トランジスタなどグラフェンデバイスの性能向上につながることが期待される。また同様の測定方法・理論解析を他の層状物質系に応用し,層状物質での輸送特性における界面の効果を明らかにすることが可能であるとしている。