千葉工業大学,産業技術総合研究所,物質・材料研究機構は共同で,白金ナノギャップ構造を利用し,600 ℃でも動作する不揮発性メモリー素子をはじめて開発した(ニュースリリース)。
通常のシリコン半導体を用いたメモリー素子では,高温時に半導体性を発揮するバンドギャップが小さくなり,200 ℃を超える高温では情報を維持することはできない。つまり,これまで高温下で書き込みや読み込みを行うことはできず,高い温度で記録を守る技術はほとんどなかった。
ナノギャップメモリーは,ナノギャップの空隙に可逆変化するナノピラーが成長し,接近と乖離を行なうことで抵抗値を変化させる。接近時と乖離時にはトンネル電流の抵抗値が大きく変わるので,オンとオフの2状態を作ることができる。ナノギャップメモリーは,金属構造が維持される限り,記憶が保持できる。
今回,同大がもつナノギャップ電極の電極金属の結晶性改善技術を用いることで,高温時メモリー機能の維持に寄与するナノ構造の構造変化のメカニズムを解明した。この現象解明をもとに,電極金属に高温でも構造変化しにくい白金を電極素材として採用することで,高温でのメモリー動作を実現した。
室温から600℃までのオン/オフ比では,400℃付近で低下する金に比べ,高融点の白金ナノギャップメモリーは高温環境下でも高いオン/オフ比を示した。高温環境下でのナノピラーの形成メカニズムも温度依存性の観点から明らかにし,白金ナノギャップはメモリーとして動作可能であることが分かった。さらに,白金ナノギャップメモリーは高温環境下でも室温と同じく安定に情報を維持し,書き込んだ状態も600℃で8時間以上保持した。
今回の成果から,災害時などの高温下でデータを保存できるようになることで,安心・安全な社会の構築に寄与することが期待できるほか,データセンターなどで冷却エネルギーを削減でき,省電力への期待も大きいとしている。
研究グループは今後,基礎研究を継続し,実用化に向けた研究および更なる高温に対応できる材料探索を行なう。今回,明らかになったナノギャップメモリーの高温耐久性能は,室温で保存すればさらに情報保持時間が長いことを示唆しており,長期記録メモリーの開発も期待できるという。
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