島津製作所,光と超音波によるインフラ検査技術を開発

島津製作所は,超音波と光を用いて鋼構造物やコンクリートにおける隠れた欠陥を非破壊で検出・画像化する新技術を開発した(ニュースリリース)。

検査対象物体の表面に超音波を伝搬させ,振動によって発生した表面の微小な変位を専用のレーザ照明およびカメラで検知し,超音波の伝搬の様子を可視化する。この時,検査対象物体の表面付近に亀裂や剥離,空洞などの内部欠陥が存在すると,その箇所が超音波の伝搬の乱れ(不連続箇所)となって検出されるというもの。

超音波を用いた従来の探傷技術は主に対象物体の深さ方向の断面に沿って欠陥を検知するのに対し,同社が開発した新技術は,目視や通常のカメラ撮影と同様の視野で欠陥を観察できるため,欠陥の位置や形状を簡便に確認できる点に優れているという。また,従来は異なる検査技術が適用される鋼材とコンクリートの検査を単一の検査技術でカバーできる。

これまでに実施した基礎実験では,塗装鋼板の塗膜下の亀裂や塗膜の浮きなど,目視では確認できない欠陥を検知できたとする。この技術を実用化すれば,検査前の塗膜除去が不要になり,検査工程の大幅な省力化が期待できる。また,コンクリート表面付近に存在する微小なひび割れや,表面から1cm以内の深さに存在する剥離など,従来技術では検知が難しかった欠陥を画像観察することにも成功したという。

同社は今後,この技術の実用化を目指して実証実験を重ね,ユーザビリティの向上,性能改良を進める。橋梁など交通インフラ構造物の検査用途への適用に向けては,本年9月から,京都大学と共同で実証研究を開始した。

また,プラント設備の検査用途への適用のため,インフラ管理者や検査事業者と連携し,今年度中にフィールド実証をスタートさせ,3年後を目処にこれらの分野でこの技術の製品化や事業化を目指す。また,材料試験機や非破壊検査機器を始めとする同社既存製品との技術シナジーの創出も検討する。

関連記事「NEDO,インフラロボットの開発を強化」「原研ら,レーザーのトンネル検査を高速化」「NEC,インフラの劣化状態をカメラ映像から推定するシステムを開発

その他関連ニュース

  • 古河電工,レーザーで船体の錆・塗膜を除去 2024年04月15日
  • 京大ら,高出力狭線幅フォトニック結晶レーザー実現 2024年02月28日
  • 中大ら,CNT型のMMW-IRセンサで非破壊検査 2024年01月22日
  • NTTら,光励起電子と超音波のハイブリッド状態を実現 2024年01月19日
  • 産総研ら,ドローン空撮で橋梁のたわみを精密計測 2024年01月16日
  • 理研,シングルサイクルレーザー光をTW級に増幅 2023年12月20日
  • リコー,路面簡易点検支援サービスを開発 2023年12月13日
  • 筑波大ら,カラーイメージング法で流体混合を計測 2023年11月17日