東京大学をはじめとする国際共同研究チームは,塵に隠されているために星の分布がよくわかっていなかった銀河中心の周辺とその向こう側に,29個のセファイド変光星を発見した(ニュースリリース)。
天の川銀河は,太陽を含む数千億個の星が集まる渦巻銀河である。しかし,星の分布を外から見ることのできる他の銀河と違い,我々自身が内部にいる天の川銀河の形を調べることは容易ではない。また,天の川の円盤中に存在する大量の塵によって星からの光がかすかになってしまうことも大きな障壁であった。
セファイド変光星は,個々の星までの距離を得られる「宇宙の灯台」とも呼べる天体。南アフリカ天文台にあるIRSF望遠鏡とSIRIUS近赤外線カメラを用い,2007年から2012年にわたり,天の川銀河の中心がある「いて座」の方向を繰り返し観測し,29個のセファイド変光星を発見することができた。
今回の研究では,塵によって星の光が吸収散乱されてしまう効果も新たな視点で解析を行ない,天の川銀河の中心付近の星の分布を描き出すことに成功した。
それによって,銀河の中心から約8千光年の範囲が,セファイド変光星によって代表される若い星(3億年以内)がほとんど存在しない「すき間」であることを世界で初めて明らかにした。
銀河の形を探る上で、セファイド変光星が「宇宙の灯台」として重要な役割を果たすこと,その距離の測定には塵の効果を正しく考慮に入れる必要があることを示した点で,今後の天の川銀河の研究に大きな影響を与える成果だとしている。
関連記事「慶大,天の川で二番目に大きいブラックホールの兆候を発見」「東大ら,原始グレートウォールに銀河誕生の現場を発見」「アルマ望遠鏡,銀河に漂う炭素原子の痕跡を発見」