月刊OPTRONICS 特集序文公開

多様な材料を用いたレーザー・マイクロ3Dプリント技術とその応用

1.はじめに

光造形法(液槽光重合法)は,付加製造技術の中で最も高精細・高分解能な造形技術であり,マイクロからミリサイズの3Dモデルの造形も可能である。このため,高精度な3Dモデルが必要となる宝飾や歯科から,マイクロサイズの微細構造が求められる光学素子,マイクロ流路,医療用足場などに幅広く活用されている。造形方式としては,大型モデルの造形に適した自由液面法,小型モデルの高精細造形に適した規制液面法,マイクロサイズの造形に適したレーザー直接描画法などがある。

最近では,新たな手法として,光硬化性材料を貯蔵した容器を回転させながら,プロジェクタから光照射するだけで3Dモデルを高速造形できるボリューメトリック3Dプリント法なども開発されている。これらの中で高分解能なマイクロ光造形に適した方法は,規制液面法やレーザー直接描画法である。また,露光方式としては,プロジェクタを用いるDLP方式よりも,ガルバノスキャナによるレーザー走査によるSLA方式のほうが高分解能な造形に適している。なかでも,フェムト秒レーザーを用いた2光子造形法は,100 ナノメートルレベルの微細造形が可能であり,最近は4インチウエハに対応した大型の造形装置も複数販売されている。

このような造形技術の進展とともに,使用される光硬化性材料の開発も活発に行われている。産業応用では,最終製品の製造を目指して,ABS相当の機械特性を有する高強度樹脂や高耐熱性樹脂,さらには高速通信(5G,6G)への対応を考慮した低誘電率・低誘電損失樹脂など多様な樹脂材料が開発されている。また,光硬化性樹脂にセラミックスやシリカナノ粒子を混合した光硬化スラリーを用いたセラミックスやガラス造形用材料も盛んに研究開発されている。研究面では,高速造形用材料の開発や4Dプリンティング向けの機能性材料の開発が活発に行われている。

本稿では,最近,我々が開発した新規な光硬化性樹脂について紹介する。まず,従来の光造形に用いられてきたラジカル重合やカチオン重合ではなく,RAFT( ReversibleAddition-Fragmentation Chain Transfer)重合を用いた樹脂について述べる。この樹脂は,ミクロ相分離によって,単一材料でありながら,露光条件を変更するだけで造形物の物性を局所的に制御できるという特徴がある。また,このような造形物の相分離制御技術を発展させて,導電性高分子を複合化した光造形用樹脂についても紹介する。この材料は導電性と柔軟性に優れているためフレキシブルエレクトロニクスやバイオセンサーなどへの応用が期待される。最後に,このような新材料を活用して,光造形によって機能デバイスを製造するために不可欠となるマルチマテリアル造形法の開発についても紹介する。

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