月刊OPTRONICS 特集序文公開

光量子コンピュータ開発の世界動向

著者:東京大学 武田俊太郎

1.光量子コンピュータが注目を集める理由

現在,世界では量子コンピュータの開発競争が激しさを増している。近年の代表的な開発方式は,超伝導回路・イオン・中性原子・半導体・光の5つである。先頭を走る超伝導回路方式では,1000個以上の量子ビットを搭載した実機も報告されている。一方で,様々な計算で現在のスーパーコンピュータを超える性能を発揮するには100万個以上の量子ビットが必要とされ,最終的にどの方式が本命かは見通せない状況である。


これら5つの開発方式の中でも,異色のアプローチでひときわ存在感を放っているのが光を用いた量子コンピュータである。この方式では,日本も独自のアプローチで世界最前線にいると私個人は考えている。光量子コンピュータには特有の強みがあり,実現すればオールマイティな量子コンピュータが実現できる。まず,光量子コンピュータは他の方式で不可欠な真空装置・冷却装置がほぼ不要である。このため,大規模マシンを作る際の制約が少なく,スケールアップがしやすい。また,光子は光の速度で移動するため通信に適しており,光量子コンピュータ同士を接続して簡単に量子コンピュータ・ネットワークが構築できる。さらに,光は周波数が高いため,高クロック周波数の量子コンピュータが実現しうる。

このように,光量子コンピュータは魅力的なアプローチとして注目を集める反面,「分かりにくい」という声もよく耳にする。その理由は,他の方式にはない特有の計算方式が採用されるケースが多いからである。光量子コンピュータには,情報単位が「量子ビット」か「連続量」か,計算方式が「回路型」か「測定型」かで,4種類の計算方式がある。さらに,それらとは別に,量子超越性の実現向けに設計された「特化型」の計算マシンも存在する。本稿では,これらの計算方式を整理した上で,実際に光量子コンピュータ開発を行う代表的なベンチャー企業や我々の近年の取り組みについて紹介したい。

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