月刊OPTRONICS 特集序文公開

非冷却赤外線センサ向けメタレンズの開発

著者:三菱電機㈱ 花岡美咲, 岩川 学, 小川新平

1 はじめに

赤外線は可視光よりも波長が長く,小さなエネルギーを持つ光であり,中でも長波長赤外線(波長8 ~ 14 μm)の光は人間や動物など温度を持つ物体から発せられる熱放射である。この波長域における非冷却赤外線センサは,抵抗ボロメータやサーモパイルが主流であり,これらは光エネルギーを検出器上で熱に変換し,電気信号の変化として検出する。三菱電機では,Silicon On Insulator(SOI)層に形成した単結晶Siダイオードを温度センサとして用いるSOI ダイオード方式の非冷却赤外線センサを開発してきた。

近年の半導体加工技術の進展により画素や回路構造は微細化し,小型化の傾向がある。一方で,長波長赤外線のレンズは,材料に使われるSiやGeなどの屈折率の低さから,レンズは大型で厚みが必要である。我々は,より小型で高性能な長波長赤外線センサを実現するために,メタレンズの開発を進めている。メタレンズは,波長より小さな人工構造体から構成されたレンズである。その構成単位はメタアトムと呼ばれ,柱(ピラー)形状が一般的である。入射光に対してこのピラーが導波路として作用し,局所的に透過した光の位相を変化させる。結果的にメタレンズ全体として従来の屈折レンズのような特性を基板平面に持たせることが出来る。具体的には,メタアトムのピラーの太さを同心円方向に変化させた際の位相変化を求め,所望のレンズ性能から要請される位相分布に従って,太さの異なるピラーをもつメタアトムを配置することで集光レンズとして機能させる。長波長赤外線センサ向けのメタレンズは,メタアトムがミクロンオーダーの形状で良いため通常のフォトリソグラフィ工程が適用でき,材料にSi 基板を用いて半導体プロセスによる製作が容易という利点がある。我々は,Si 基板をベースとしたメタレンズを試作し,SOI ダイオード方式赤外線センサと組み合わせて画像評価を実施した。

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