NEDOら,5mm角の超高速・低消費電力光トランシーバを開発

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)は,シリコンフォトニクス技術を用いた,世界最小5mm角の超小型光トランシーバ(光I/Oコア)を開発,1Gb/sあたり5mWの消費電力,1チャンネルあたり25Gb/sの伝送速度を実現するとともに,マルチモードファイバを用いて伝送距離300mの高速データ伝送を実証した(ニュースリリース)。

電気配線によるデータ伝送に対して,光配線では,伝送信号の劣化が非常に小さく,消費電力の増加は極めて小さいというメリットがある。光配線技術は,ボード間やチップ間配線への適用が期待されているが,それらに適用するためには,光トランシーバの大幅な小型化・低コスト化と共に,更なる低消費電力化と電気・光信号の接続部の実装し易さが求められている。

今回,NEDOと技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)は,シリコンフォトニクス技術を用いた超小型光トランシーバ(光I/Oコア)を開発した。この光トランシーバは,世界最小の5mm角で,1Gb/sあたり5mWの消費電力,1チャンネルあたり25Gb/sの伝送速度を実現し,マルチモードファイバを用いて伝送距離300mの高速データ伝送を実証した。

光I/Oコアには,送信用及び受信用があり,以下に示す構成とすることで,光トランシーバとして必要な機能を5mm角と従来の1/4以下の世界最小の面積で実現した。

送信用光I/Oコアは,光源(LD),CMOSのドライバIC,光を出力する光ピン、及び電気入力のためのTGV(Through Glass Via)付ガラスから構成されている。一方,受信用光I/Oコアは,受光器等を集積したシリコンフォトニクス集積回路基板,電気信号を増幅するCMOSのTIA(Trans Impedance Amp)-IC,光を入力する光ピン,及び電気出力のためのTGV付ガラスから構成されている。

送信用光I/Oコアでは,光源(LD)からの出力光が,スポットサイズ変換器を通して光導波路に結合し,光変調器でドライバICからの25Gb/sの電気信号により光信号に変換され,回折格子結合器で光ピンを通して外部に出力される。受信用光I/Oコアでは,25Gb/sの入力光がゲルマニウム(Ge)面受光器で光信号から電気信号に変換され,TIA-ICで増幅されて,外部に電気信号として出力される。光信号と電気信号の入出力部は,光ピンとTGVを用いることで同一平面上に実現した。

また,光変調器をCMOSトランジスタと同じMOS構造とすることにより,低容量化,低損失化を図った。さらに,変調器を複数に分割することで0.9Vでの駆動を可能とし,波形制御等の付加回路を用いずに良好な波形品質を確保する事に成功した。受信器のTIA-ICも0.9Vで駆動でき,送受信光I/Oコアペアで1Gb/s当たり5mWと従来の1/3以下の低消費電力化を実現した。

さらに,1.3µm帯に最適化されたマルチモードファイバを用いて,25Gb/sの高速伝送実験を行ない,符号誤り率を測定した結果,300m伝送後も10-12以下の特性を示した。これは,屋内のデータ伝送で要求される,実用上十分な光ファイバ長となっている。

光の入出力部に接着固定される光ファイバは,従来,シングルモードファイバが用いられており,1ミクロン以下の高精度な位置合わせが必要で,生産性向上,低コスト化の課題となっていた。今回開発した光I/Oコアでは,光の入出力部に光のビームサイズを制御可能な光ピンを用いることで,マルチモードファイバあるいは,樹脂系のマルチモード導波路との接合において,10μm程度の位置合わせ許容度を実現している。

これにより,光軸調整を行なわないで済み,電気ICなどで一般的に用いられているフリップチップボンディング装置を活用して,光の入出力部に接着固定が可能となり,生産性向上,実装コスト低減に大きく貢献できる。

この技術により,光I/Oコアが持つ光と電気の入出力機構に光配線を繋ぐことで,消費電力を抑えながら大容量データの高速な送受が可能となり,サーバなどの情報通信機器の小型,低消費電力,高速化とともにデータセンタの省エネ化が期待される。研究グループは,今後,早期に光I/Oコアの実用化を進めていくと同時に,コーニング社と共同で1.3µm帯マルチモードファイバ伝送の検証を進めていく予定。

光I/Oコアは,2015年の末ごろ,サンプル供給を開始する計画。将来的には,更に高集積化を進め,ボード間やチップ間の光配線への適用を目指していくとしている。

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