日傘男子誕生

夏の出張で,炎天下を歩かなければならなくて辟易していたら,同行していた同僚がすっと日傘をさし,「一緒に入りますか」と言ってきた。それが女性だったら「あ,そう」などと言ってにやけ顔がバレないように好意に甘えるところだが,さすがに暑さの中で男同士の相合い傘はむさ苦しい。

僕は即答で断ったのだが,それにしても,容赦ない夏の太陽だ。やせ我慢をして日射に無防備で歩きながら,実は僕は日傘をさす同僚が羨ましくて仕方がなかったのだ。

おそらく多くの人は日傘といえば女性を思い浮かべることだろう。着物を着た楚々とした女性が片手に中元を抱え,日傘をさして小股で歩いていく風景というのは(実際にはそんな風景を見たことはないけれど)日本の夏の風物詩だ。

また,モネの絵を思い浮かべる人も多いだろう。モネは日傘を持つ女性の絵を何枚も描いている。中でも「散歩,日傘をさす女」が有名だ。晴れた空の下,白いドレスを着た女性が草原に立ち,土手の上からこちらを眺めている。彼女は白い日傘をさしているが,その裏側には草原の緑が反射している。傍らには帽子をかぶった子供の姿だ。

この続きをお読みになりたい方は
読者の方はログインしてください。読者でない方はこちらのフォームから登録を行ってください。

ログインフォーム
 ログイン状態を保持する  

    新規読者登録フォーム

    関連記事

    • 灯影に映って死んだ女房の話

      著者:納谷昌之 今昔物語に、「灯影(ほかげ)に映って死んだ女房の話」という小話がある。美しく、性格も良かったため、皆から慕われていた小中将の君という女房(宮仕の高位の女官)がいた。ある時、小中将が仕える屋敷の一室で灯火が…

      2026.09.10
    • ちょうど良い暗室

      著者:納谷昌之  光屋にとって、暗室は身近な存在だろう。僕にとっても、大学の光学の研究室で学んで以来、長い付き合いになる。指導教官から一通りの説明を受け、初めて一人で暗室に残された時の光景は、今でも忘れられない。レーザー…

      2026.08.12
    • 遥かなる蜃気楼

      著者:納谷昌之  5 月に、富山県魚津市に行ってきた。魚津市は蜃気楼が現れる街として有名である。屏風のようにそびえ立つ残雪の立山の眺めも魅力的だ。そして、5月はホタルイカなど、富山湾の海の幸も旬となる。そのすべてを体験す…

      2026.08.12
    • グラスが放つ光

      著者:納谷昌之  水や酒が入ったグラスを透かして、テーブルに映る光を眺めるのは楽しい。とりわけ、真上にスポット照明があるような場所で、グラスの底を通って作り出される光の模様が僕は好きだ。できれば部屋は薄暗い方がいい。光が…

      2026.07.08
    • つり革の幻影 回折かピンボケか

      著者:納谷昌之 僕がよく乗る小田急線のつり革は、握りの部分が円形をしている。座席に腰を下ろすと、その下辺あたりが、荷棚のステンレスパイプとちょうど重なる位置に見える。そのパイプには、天井の照明が細いスリット状の光として映…

      2026.05.13

    新着ニュース

    人気記事

    編集部おすすめ

    • オプトキャリア