夏の出張で,炎天下を歩かなければならなくて辟易していたら,同行していた同僚がすっと日傘をさし,「一緒に入りますか」と言ってきた。それが女性だったら「あ,そう」などと言ってにやけ顔がバレないように好意に甘えるところだが,さすがに暑さの中で男同士の相合い傘はむさ苦しい。
僕は即答で断ったのだが,それにしても,容赦ない夏の太陽だ。やせ我慢をして日射に無防備で歩きながら,実は僕は日傘をさす同僚が羨ましくて仕方がなかったのだ。
おそらく多くの人は日傘といえば女性を思い浮かべることだろう。着物を着た楚々とした女性が片手に中元を抱え,日傘をさして小股で歩いていく風景というのは(実際にはそんな風景を見たことはないけれど)日本の夏の風物詩だ。
また,モネの絵を思い浮かべる人も多いだろう。モネは日傘を持つ女性の絵を何枚も描いている。中でも「散歩,日傘をさす女」が有名だ。晴れた空の下,白いドレスを着た女性が草原に立ち,土手の上からこちらを眺めている。彼女は白い日傘をさしているが,その裏側には草原の緑が反射している。傍らには帽子をかぶった子供の姿だ。
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