学術と産業の架け橋となり,更なるイノベーション創出を

◆久間和生(キュウマ カズオ)

(一社)レーザー学会 会長

【経歴】1977年:東京工業大学大学院 博士課程電子物理工学専攻修了(工学博士),同年三菱電機株式会社入社。

中央研究所配属,人工網膜チップ等の研究開発と事業化を推進。先端技術総合研究所所長,常務執行役開発本部長,専務執行役半導体・デバイス事業本部長を歴任。2011年:代表執行役副社長に就任。

2013年:内閣府総合科学技術会議議員(常勤),2014年:内閣府総合科学技術・イノベーション会議議員(常勤)。

2018年4月:農業・食品産業技術総合研究機構 理事長。2018年6月:レーザー学会会長に就任。2022年7月:国立研究開発法人協議会・会長に就任。

1973年に発足したレーザー学会が2023年に50周年を迎えた。半世紀にわたり,光・レーザー研究を支え,成果発表や交流,議論の場を提供し続けてきた。21世紀は光の時代と言われ,光・レーザー技術の応用は格段に広がり,今なおその進展が期待されている。

このような中にあって,ますますレーザー学会の存在価値が高まるものと見られている。そこで今回,レーザー学会会長の久間和生氏に創立50周年を迎えての思いや,光・レーザー分野を取り巻く環境の変化と今後の取り組みについて語っていただいた。

─レーザー学会創立50周年を迎えての率直な気持ちをお聞かせください

私も光エレクトロニクスの研究者でしたが,研究者としてのキャリアをスタートした頃は,光技術が大変注目され,イノベーションの芽が出てきた時代でした。もともとレーザーは,1917年にアインシュタインが誘導放出を予測してから始まったわけですが,1950年代にこの誘導放出により,レーザーやメーザーができるという考えがチャールズ・タウンズにより提唱されました。

その後,アメリカのベル研究所,IBMワトソン研究所やヒューズ研究所を中心に,現在の産業を支えるデバイスや光エレクトロニクスの基礎的な技術が次々に実現されていきました。

レーザーに関しては1960年にセオドア・メイマンがヒューズ研究所でルビーレーザーの発振を初めて確認しました。1970年代にはベル研究所の林厳雄とモートン・パニッシュ他が半導体レーザーの室温連続動作を達成しました。その後,半導体レーザーの研究が加速していきました。レーザー学会が創立されたのはその頃で,1973年にレーザー懇談会として発足しました。非常にタイミングが良かったと思います。後に学会へと発展していくわけですが,レーザー研究の黎明期を支えてきた日本の研究者のお陰だと思います。

レーザー学会はこの50年間,レーザー技術の進歩と実用化,普及に大いに貢献してきたと同時に,学会としての体制をしっかりと作ってきました。具体的には,会誌『レーザー研究』の発行,各種研究会の発足と活動,年に一度の学術講演会の開催,さらに国際会議や展示会の開催などを通じて,レーザー技術の発展の一翼を担ってきました。

中でも,通常の学会活動以外にオプトロニクス社様にも協力をいただいている国際会議OPIC(Optics and Photonics International Congress)や展示会OPIE(Optics and Photonics International Exhibition)の日本国内での同時開催は,非常に大きなアクションだと思います。これによって学術界と産業界がうまくつながり,レーザーに関わる人材育成やコミュニティ形成が大いに進展したと思います。オプトロニクス社様をはじめ,レーザー学会の活動を推進,支えてこられた先生方,会員の皆様,また賛助会員の皆様に深く敬意と感謝の意を表します。

また,この場をお借りして,レーザー学会に多大な貢献をいただいた我々の大先輩,霜田光一先生(日本学士院,レーザー学会第4代会長),並びに豊田浩一先生(理化学研究所・元主任研究員,レーザー学会第6代会長)のご逝去に対して,謹んでご冥福をお祈りいたします。

レーザーの性能向上と応用拡大はとどまるところを知らず,材料技術,半導体技術,量子エレクトロニクス,人工知能(AI)などの情報通信技術との融合によりますます発展していくと思います。

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