─いよいよペロブスカイト太陽電池を採用した製品の登場で,ビジネス展開が期待されます。しかし,少し心配されるのが,シリコン系太陽電池の二の舞になるのではないかという指摘です。この点についてどのようなお考えでいらっしゃいますか?
国産化の期待は大きいものがあります。私もそれを受けて国産品を作るための企業を集め,コンソーシアムを発足させようとしています。2025年くらいまでに試作品を世に示すために動いていますが,一方で他国,とりわけ中国に先を越されるのではないかと懸念されています。
これに対しては,これまでの太陽電池とは異なっていて明らかに日本が強みを持つ可能性があると思っています。というのは,ペロブスカイトはさっきもお話したように,膜を作る過程が機械的なプロセスではなく,化学反応プロセスだからです。ですから,プロセスの開発は機械的にできるものではなくて,非常にノウハウやレシピを必要とします。この点に関して特に日本は強いと感じています。日本は製造工程となる塗布・印刷技術が非常に高いレベルにありますし,非常に忍耐強く,地道にレシピを開発する力を持っていると思っています。
もう一つは,原料をすべて国内で調達することができることも強みです。とりわけ使用率が高いヨウ素は,日本はチリに次いで世界第2位の生産量を誇ります。原料のほとんどを国内で賄うことができ,作り方も真似ができないレベルの高いものを日本が作れるとなったら,これは非常に大きな強みとなります。◇
(月刊OPTRONICS 2023年10月号)