今回のインタビューには,名古屋大学大学院工学研究科・教授の西澤典彦氏にご登場いただいた。西澤氏は超短パルスファイバーレーザーに関する研究を主導しており,現在光周波数コム,超広帯域スーパーコンティニューム光源を開発。さらに超高分解能OCTの開発を行なっており,バイオイメージング応用を切り拓こうとしている。
西澤氏は昨年,応用物理学会のフォトニクス分科会幹事長に就任し,研究活動と学会活動の両輪を回すことによって,フォトニクス研究の発展に尽力している。来年1月には名古屋でレーザー学会学術年次大会も控えている。そこで今回,西澤氏に最近の研究内容とフォトニクス分科会の現状と今後,レーザー学会学術年次大会の意気込みについて話を聞いた。
─先生のこれまでのご研究についてお聞かせください
私は現在の所属と同じ名古屋大学工学部の電気系出身で,当時は強電の電気系,弱電の電子工学,情報系の3専攻で構成されていまして,学部時代はその全ての講義を受けました。
学部4年時の研究室選びでは,光通信や光コンピュータの研究が当時話題になっていたので,将来性のある光の研究を行なっている研究室を希望しました。それで志望し,入室が決まったのが,恩師となる後藤俊夫先生の研究室です。
後藤先生は応用物理学会の会長も務められた方ですが,当時,工学部の中で最も大きな研究室の一つで,博士課程の学生も多く,非常に活気がある研究室でした。レーザーといった量子光エレクトロニクスがキーワードの研究室でしたが,プラズマの研究が最も盛んで,その他にはエキシマレーザーや光通信用レーザーなどカバーする範囲も広く,スタッフも多い研究室でした。
私の学生時代の研究テーマは,短パルスレーザーとファイバー非線形効果を用いた量子工学でした。そこから研究がスタートしたんですけども,ちょうどその頃に工学部に量子工学専攻が新設されました。私はその一期生になります。
今では,量子工学はけっこう盛んな研究分野ですけども,当時は萌芽期で,研究グループもまだ少ない状況でした。そのような状況の中で,研究室で初めて量子工学という非常に難しいテ ーマに取り組むことになりましたが,当時助教授でいらした森正和先生にご指導いただきながら,研究を進めていきました。ノウハウも装置もないという,ゼロからのスタートでしたけど,試行錯誤しながら自分たちでノウハウを蓄積し,装置も作りながら研究を進めました。結果が出るまでに長い時間を要しましたけど,知恵を絞り,アイデアを考えながら研究を進めるという日々で,非常に充実した毎日でしたね。