レーザー加工に関する技術講座も行なっています。 2022 年10月は『安全』をテーマに行ないましたが,これまでにレーザー機器やプロセスなど基礎的な理解を深めていただくことを目的として,毎回テーマを決めて実施してきました。また,『名古屋レーザニュース』という会員向けの機関誌も発行しています。年に1~2回刊行しているもので,最近のトピックスや実用化技術の紹介,国際会議出席の報告などを掲載しています。
最近では新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあって実施ができておりませんが,見学会も行なっていました。例えば,川崎重工業兵庫工場の見学会では,鉄道車両のレーザー加工の現場を見学しました。1992年には, 1985年から1990年までの6年間の国内外のレーザー加工関連の文献を分担して調査し,約1,900 ページ(A4版)からなる『レーザ応用技術データシート集』をまとめ,刊行しました。このような調査研究も行なっています。
─中部レーザ応用技術研究会には,どのような特長があるのでしょうか?
沓名:これについては,皆さんからお願いします。
前田利光(以下,前田):当社前田工業は機械設備の設計・製造,機械加工からレーザー加工に至る事業を行なっていますが,レーザー加工事業を展開するにあたり,この研究会に参加することで多くの情報を収集してきました。
私が個人的に感じているのは,この研究会は極めて実践的志向の強い会だということです。中部地区はトヨタ自動車さんをはじめ,自動車産業に関わる多くの企業が集積しています。こうした分野においてレーザーが浸透していくスピードは非常に速いものがあります。そのため,ニーズとシーズとが同時並行で動き,トライ&エラーでも って示された最適な条件を指針として提示する必要があります。この支援を行なっているのが,この研究会であり,前述した実践的という意味につながっています。
武田晋(以下,武田):当社はドイツに本社を置くレーザーラインの日本法人で,加工用高出力半導体レーザ ーを中心とする発振器・周辺機器の製造販売を手掛けています。私は現在,この研究会の副会長を務めさせていただいておりますが,専門商社に在籍していた時から会員として参加してきました。
先程,沓名先生や前田社長もおっしゃられていましたが,愛知県は日本の中でも最もレーザーを使用している地域だと思っています。それは基礎研究向けというよりも,むしろ量産用としてレーザーを使っているエリアなので,会員企業としてはビジネスに深い関わりができています。ですから,この地域独特のものづくりに関わるようなところで中部レーザ応用技術研究会が活動しているというのは,他の研究会とはまた違った魅力があると思います。
坪井昭彦(以下,坪井):私がこの研究会に入会しましたのは,レーザー受託加工事業を行なっているレーザ ックスに所属していた時で,研究会の発足にも関わらせていただきました。発足以前,東京にはレーザ協会があり,大阪にはレーザ熱加工研究会(現・レーザ加工学会)が活動されておられたと思います。
先ほど,沓名先生もお話しされましたが,私も東京と大阪にはレーザー加工に関わる組織が活動されているのに,レーザーを作る側も使う側も多くの拠点がある中部地区に無いのは何故だろうかと思っていました。当時はちょうどCO2レーザーを三菱電機さんが名古屋で拠点を築いて製造されていましたし,次いで,基本波のYAGレーザーがまさに加工の現場に適用されようとしていた時代でした。
研究会の初代会長はトヨタ自動車から豊田中央研究所に移ってこられた新美格先生で,2代目の会長は,やはり同じく豊田中央研究所におられた高瀬公宥先生です。私は,高瀬会長の時代に研究会の幹事長に任命されまして,この研究会の方向性などについて先生方と盛んに議論した記憶があります。
2000年代以降は,武田社長の会社が頑張られておられる半導体レーザー,またファイバーレーザーやディスクレーザーといった光源が開発されてきました。こうした加工用レーザーが次々に出てくる中で,中部レーザ応用技術研究会では,現場に即した情報の発信を続けているのが特長かと思っています。