次世代LiDARを開発する米AEyeは2022年12月5日,同社製品の紹介と日本におけるビジネス戦略についてメディア向けに説明会を開催し,会見後に創設者でCTOのLuis Dussan氏が本誌インタビューに応じた。AEyeは2013年に設立,軍事ターゲティングシステムを応用したインテリジェントセンシングプラットフォーム「4Sight」を開発し,独Continental とLiDARの共同開発を発表しているほか,CESのイノベーションアワードをはじめとする技術的な賞を獲得するなど,急速にプレゼンスを増している。
同社は「4Sight」について,「ソフトウェア定義型プラットフォーム」と説明する。これは,かつての携帯電話が通話機能しか持たなかったのに対し,現在のスマートフォンがインターネット接続をはじめとする様々な機能を持つように,「4Sight」はクローズドなハードウェアではなく,ファームウェア,ASIC,OSなどに対してオープンな,モジュラー型のアーキテクチャであり,AIを搭載することで, LiDARのシステム全体をインテリジェント,そして適応力のあるものにするという意味だという。
これにより同社のLiDARは,カメラやレーダーといった他のセンサーからの情報も受け取れるだけでなく,LiDAR自身もスキャニングパターンを変更するなどして様々な状況に対応する。さらにOTA(Over The Air:無線通信)によるアップデートが可能で,メーカーやOEMはLiDARの本体はそのままに,新しい機能の追加ができる。
同社のLiDARは,ADASとの連携やロボットタクシーへの搭載はもちろん,ITS(高度道路交通システム),スマートシティ,配達用ドローンへの適用も想定している。中でも長距離トラックは,いち早く自動運転が導入される可能性が高いことから,同社では重要な市場として捉えている。
自動運転で求められる長距離の検出性能において,同社のLiDARは業界で初めて1km先の車の検出に成功しているほか,防衛関連のアプリケーションでは3kmも実現したという。また,スキャン速度を速めることにより,飛翔する銃弾をトラッキングする映像を紹介するなど,高いパフォーマンスをアピールした。そこで今回のインタビューではLuis Dussan氏に,同社のLiDARの特長と光学系について話を伺った。
─LiDARを開発するきっかけを教えてください
私のバックグラウンドとして,電子工学,コンピューターエンジニアリング,量子光学,計算物理学といった知識があります。ずっとLiDARを開発する仕事をやりたいと考えていたところ,様々なチャンスが積み重なり,やるべき時が来たと感じたので実行に移したということです。最初のトライでしたが,きちんとまわっていくビジネスとなったのは実に幸運でした。
─ビジネスモデルについて教えてください
我々は自分たちで製品を作るのではなく,技術やソリューションを顧客に提供します。Appleが自分たちでは製品を作らずに製造をFoxconnに委託しているのと同じようなものです。現在,ADAS向けのLiDARはContinentalにライセンスを提供して彼らが製造していますが,それ以外のアプリケーションでは他の契約メーカーが製造しています。
─トラックの自動運転市場に力を入れていくというお話でした
トラックは制動距離の問題から500m先の障害物や隣のレーンの様子も捉えることが望まれますが,例えばレーダ ーは遠くまで見えても解像度が不足しますし,カメラは解像度が高くても遠距離の測距が苦手で,コントラストによっては検出できないこともあります。その点LiDARは長距離が見えて分解能も高いという点で優れていて,コントラストにも左右されません。さらに動きの予測が不可能な物体,例えば車線をすり抜けて来るオートバイのような物体をセグメント的に捉え,追跡することはレーダーよりLiDARの方が得意ですし,雨や雪,霧といった悪天候時も,アクティブに光を照射するLiDARが有利です。
また,長距離トラック市場は世界でも最も大きな市場の一つです。長距離のトラック輸送はクローズドな高速道路をハブからハブまでといった決まったルートで輸送するので,自動運転に適していると言えますし,さらには慢性的な運転手不足という問題もあります。我々はパートナーと協業してこの問題に取り組んでいますが,彼らはカメラやレーダー,超音波と共に我々のLiDARをメインのセンサーとして使っています。もし今後,例えばトラックメーカーのOEMとしてシステムを提供するとなれば,我々はLiDARのハードウェアとソフトウェアを提供し,そのシステムをトラックに積むことで自動運転を可能にします。