─日本の加工市場をどのように見られていらっしゃいますか?
日本はアジアの中で非常に特殊な位置にいると思います。周りの国を見渡すと,例えば,中国や東南アジアという,安くて大量に作るような市場があります。その市場で売れる機械というのは,大量生産用です。
一方,日本市場は他国と比べると,高付加価値のある加工を行なっているお客様が多いので,装置に対する仕様についても高い要求があります。実は,ドイツも日本に近い傾向を持った市場であると言えます。我々はお客様の高度なニーズを把握し,高精度な製品を提供する基盤があります。最近では,精度を維持したまま価格を抑えたエントリーモデルもラインナップに加えました。
加工機の視点から市場環境を見ると,労働人口の減少は避けることができません。かたや新型コロナウイルス禍になり,中国や東南アジアに外注していたそれまでの仕事が維持できなくなるリスクによって,自前で加工を始めるケースも出てきました。ただ,仕事量が増える一方で労働力不足が懸念されています。
そのため,加工装置には完全オートメーション化がより求められるようになり,実際に導入機運は高まっています。我々はここに優位性を持っていますので,日本のお客様に良い製品・ソリューションをお届けし,お客様の競争力強化に貢献したいと思っています。
レーザー発振器の分野は,先ほど述べたように自動車を中心とした新しい産業形態に向け,高精度で熱効率が高いレーザーを提供していくことを,より一層推進していきたいと思っています。
昨年2月には京都に関西ショールームを設置しました。関西圏のお客様に製品・ソリューションを提供するための拠点ですが,このような拠点の充実にも今後努めていきたいと考えています。
─おわりに,今後の取り組みについてお聞かせください
前社長のフォルカー・ヤコブセンが4年半の間に築いたベースを引き継ぎつつ,更に加速できることや,新しく取り組めることも多くあると思っています。
一つは,統一的な意識を持つ体制を構築することです。そのためには従業員との対話が重要となります。私には経営という役割がありますが,従業員にもそれぞれ果たすべき役割があります。対話することによって,その底上げをしたいと思っています。
もう一つは,ダイバーシティ&インクルージョンを高めていくことです。日本法人には日本人の従業員以外にも,ドイツやスイス,中国など国籍が異なる従業員も在籍しています。日本式でもドイツ式でもない,我々独自の事業スタイルの実現を図ることを考えています。◇
(月刊OPTRONICS 2023年02月号)