コロナウイルスへの工学的対抗策とは? ─感染症の予防につながる製品開発に向けて

◆秋吉 優史(アキヨシ マサフミ)
大阪府立大学 研究推進機構 放射線研究センター 准教授
平成7年3月 東京工業大学 無機材料工学科 卒業
平成9年3月 東京工業大学 原子核工学専攻 修士課程卒業
平成13年3月 東京工業大学 原子核工学専攻 博士課程卒業
平成13年4月 東京工業大学 原子炉工学研究所 講師(研究機関研究員)
平成14年3月 バージニア大学 材料工学科 Research Associate(この頃までの主な研究内容:透過電子顕微鏡による照射欠陥構造解析)平成14年10月 核燃料サイクル開発機構大洗工学センター 照射材料試験室 博士研究員
平成16年4月 京都大学 工学研究科 原子核工学専攻 助手(照射後セラミックス材料の熱拡散率評価,陽電子消滅法による照射時欠陥評価)
平成27年4月 大阪府立大学 地域連携研究機構 放射線研究センター准教授

今回のインタビューには大阪府立大学 研究推進機構放射線研究センター・准教授の秋吉優史氏にご登場いただいた。

秋吉氏は自身のWEBサイトに『コロナウイルスへの工学的対抗策についての考察』を立ち上げ,公開している。このサイトでは,コロナウイルスの不活化に有効な対応策からデータに基づいた紫外線,光触媒による有用性の検証などが詳細に解説されている。

秋吉氏はご自身が専門とする放射線の知見を活かし,ウイルスの不活化に至る紫外線,光触媒の特性の立証を進め,殺菌灯によるマスクや医療用手袋の滅菌処理,光触媒を応用した空気清浄機を自らで開発し,教育現場や医療機関に無償提供を行なっている。

そこで本誌編集部では,秋吉氏にコロナウイルスの不活化に有効とされる光技術の考え方,開発された製品,今後の研究の方向性について話を伺った。

─先生の研究テーマを教えていただけますか?

私は放射線関係の研究をメインとしています。放射線が材料に当たった時に,どのように変化するかといった核融合材料の研究開発を行なっており,核融合炉という,ものすごくシビアな環境で使われる材料の研究をしています。この関係で毎年,アメリカのオークリッジ国立研究所(Oak Ridge National Laboratory,ORNL)に1ヵ月程度滞在したりしていました。加えて,最近では放射線教育プログラムの開発にも取り組み始めています。

例えば,学校における理科の教育現場で使われているような教材にクルックス管というものがありますが,これはレントゲンがエックス線を発見した時に使用したもので,このクルックス管からは,かなりの量のエックス線が漏洩しているので,安全に管理しなければなりません。そのため,しっかりと測定して評価する必要がある,というような教育を,中学・高校の先生方を対象に行な っています。

放射線から紫外線,可視光線における光のエネルギー
放射線から紫外線,可視光線における光のエネルギー

実は,クルックス管からのエックス線はエネルギーが非常に低いので,いわゆるコバルトやセシウムから出てくるようなエネルギーの高いガンマ線に比べて随分と性質が異なり,体の表面の浅いところで止まってしまうため評価の仕方を変えなくてはなりません。紫外線はさらに極端で,表面の極浅いところで止まってしまいます。そのため,放射線は単位体積に吸収されるエネルギーで評価しますが,紫外線は単位面積あたりのエネルギーとして評価しています。低エネルギーのエックス線を評価していた経験で,こうした紫外線の評価についてもすんなりと理解することが出来ました。

その一方で,紫外線も放射線と似たようなところがあるというよりは,地続きのもので,法律の上では空気を電離できるかどうかが,いわゆる放射線と紫外線などの光の違いです。紫外線の中でもUV-A,UV-B,UV-Cと波長が短くなるにつれて,エネルギーが高くなっていきます。さらにエネルギーが高くなると,エックス線やガンマ線になっていきます。

放射線の基礎知識をもとに,新型コロナウイルスに関して今回色々と調べてみて,放射線を当てるとウイルスが死滅するように,紫外線も有効ではないかと考えました。紫外線による殺菌応用は遡って調べてみると,1905年にその例が出てきます。非常に歴史があるもので,様々なところで応用されてきた経緯があります。

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