光学センサーが実現するダイバーシティ─より身近な自動運転技術の実現へ

─遠くは見えても近くは見えない?
写真6 LiDARを3つ搭載した試作機とOUSTER製LiDARのアップ
写真6 LiDARを3つ搭載した試作機とOUSTER製LiDARのアップ

レーザーを照射して跳ね返ってくるまでの時間差から距離を測っているので,遠くを見ようとするとどうしても早く跳ね返ってくる光に対処できないようです。ベロダインのLiDARは200mくらい,北陽電機のは30mくらいの距離が見えますが,遠くを見ようとするとどうしても手前が見えづらくなるという性質がLiDARにはあるようです。

─こちらの車いす(写真6)には3つLiDARが付いています

本当は頭上に付いているLiDARが一つあればすむのですが,どうしても高さが120cmを超えてしまいます。これを120cm以下の高さに付けた場合,レーザーで計測できる範囲が限定されてしまいますが,それでも自動走行できるかをテストするために,手元にもう1台設置しています。足元にも1台付いていますが,これは足元のすぐ前の様子を検出するためです。

上に付いているLiDARはアメリカのベンチャーOUSTERの製品で,手元のはベロダインの16レイヤーモデル,足元のは北陽電機の1レイヤーモデルです。

OUSTERにはちょっと面白い機能が付いていて,写真みたいな絵が撮れるんです。普通のLiDARは反射強度と距離データしか入ってこないんですけど,それにプラスアルファして普通の写真に近い映像が撮れます。これができるLiDARはこれだけです。

映像が撮れるので,この機能を使えばビジュアルSLAMや,カメラを使ったマッピングといった技術をそのまま転用できたりするので,使い方が変わってきそうです。レイヤー数は64で,今年の夏にレイヤー数が128のモデルが出ました。価格も安くて,ベロダインが今,128レイヤーで1000万円くらいしますが,OUSTERは200万円くらい,5分の1くらいの価格だと聞いています。

ただ,この車いすは高さがあるので搭乗型移動支援ロボット,原動機付自転車扱いになってしまうので公道走行にはナンバーが必要です。高さ制限の緩和もつくば市が動いてくれていますが,まあちょっと前まで109cmだったのが120cmに2年前に上がったばかりなので,すぐには無理でしょうね(笑)。

写真7 LiDARとカメラ両方を搭載した試作機とセンサー部のアップ
写真7 LiDARとカメラ両方を搭載した試作機とセンサー部のアップ

こちらの電動車いす(写真7)は,周囲にある物体の形状と見た目,両方を全方位で撮るために,全方位のLiDARとカメラを両方載せています。基本はLiDARでマッピングしていますが,例えば人を発見して避けたいと考えた場合,16本のレーザーでは人の表情や顔の向きまではわからないので,カメラによる画像で探る研究をしています。

プロトタイプですが,とりあえず自律移動やマッピングもできます。制御PCにGPUを積んでいるので,ディープラーニング系の機械学習にも使えますが,これも完全に高さを超えているので,そのうちナンバーが付きます(笑)。車いすは日本のベンチャーWHILLのものです。この会社も自動運転を目指して開発していますが,これは研究開発用モデルの車いすを改造しています。

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