3. 量子コンピュータの未来
量子コンピュータは,従来のコンピュータでは複雑すぎるタスクを処理することができるため,例えば,製薬や気候研究を加速させることができる。Atom Computing, Inc.2)などの企業が開発した最初の量子コンピュータは,光ピンセットのアレイに捕捉された個々のストロンチウム原子のスピン量子ビットで量子計算を行うために,商用超高安定レーザーを光周波数コムと組合せて使用している。
量子コンピュータのスケーラビリティと実用性は,グローバルな資金提供の焦点になっている。ドイツの連邦教育研究省が助成するプロジェクトMUNIQC-Atoms3)は,商用超高安定レーザーシステムを,やはりOFCと組合せて使用し,ストロンチウム原子のリュードベリ状態を利用して,1量子ビットまたは2量子ビットのゲートを持つスケーラブルな量子コンピュータを実証している。また別の連邦教育研究省のプロジェクトRymax4)は,ゲートベースのアプローチよりも複雑ではない量子アニーラのアプローチを追求している。光学格子内のイッテルビウム原子のリュードベリ状態が量子ビットの役割を果たしている。
必要なエネルギーが減少し,自動化レベルが向上している複雑な量子デバイスの小型化によって,宇宙を含む幅広いアプリケーションが恩恵を受けようとしている5)。小型量子計測器は個人でも使えるようになるのか?EUが助成するCSOCプロジェクトは,全てのコンポーネントをワンチップに集積した光時計の開発を目指している6)。これにより,手首に光時計を装着するというビジョンが,文字通り手の届くところに実現する。
参考文献
1)X. Zheng et al., Nature 602, 425 (2022)
2)atom-computing.com
3)MUNIQC-Atoms, bit.ly/3xr0SUx
4)Rymax, bit.ly/3Is38kB
5)T. Schmidt et al., Proc. 53rd Annual Precise Time and Time Interval Systems and Applications Meeting (2022), S. 158; bit.ly/3KhbxsJ
6)csoc-project.eu/index.php
■Optical Reference System (ORS) for quantum technologies
■①Patrizia Krok ②Gabrielle Thomas ③Michael Mei
■Menlo Systems
①パトリツィア クロック ②ガブリエル トーマス ③マイケル マイ
所属:メンローシステムズ
(月刊OPTRONICS 2024年2月号)