チャールズ・グッドイヤー

著者: admin

自動車の世界は100年に一度の変革期といわれていますが,車の中で将来も大きく変わらないであろう一つがタイヤでしょうか。タイヤの製造企業は世界に数多くあり,世界の売上規模(2022年)は図1の状況です。トップでも10%台のシェアだそうですから市場は凄い競争状態です。今回はそんな世界で革新的なゴムの発明によって貢献したチャールズ・グッドイヤー(1800−1860:図2:以下チャールズ)を追ってみました。先ずは彼のゴムへの想いに至る背景をみてみましょう。

図1 世界のタイヤ売上高ランキング(10社)「タイヤビジネス誌(米国)」の報告(2023. 8. 28)より一部引用
図1 世界のタイヤ売上高ランキング(10社)
「タイヤビジネス誌(米国)」の報告(2023. 8. 28)より一部引用

天然ゴムはクリストファー・コロンブス(1450−1506)が1490年代にカリブ海の島から自国に持ち帰っていますが,その当時は不思議な物質とされていただけでした。しかし18世紀になってゴムが有効な素材として再認識され始めます。例えば消しゴムが実用品として使われました。英国の科学者ジョゼフ・ブリーストリー(1733−1804)が1770年に鉛筆の字をこすると文字が消えることを発見し,こするの意味の“rubber”がゴムの名称になります。又,1823年にはスコットランドの化学者チャールズ・マッキントッシュ(1766−1843)が発明した防水用のゴム引布が評判となるなどから英国を中心にゴム工業が発展します。但し,その頃のゴムは暑い夏はベトベトで寒い冬はカチカチになってしまいます。多くの人たちが改善を模索していました。そんな一人がチャールズだったのです。

図2 “Men of Progress”(クリスチャン・シュッセレ画)米国国立肖像画美術館蔵より左拡大写真の〔下左〕チャールズ・グッドイヤー,〔下右〕ジョーダン・モット(鉄工所創設者),〔上〕ピーター・クーパー(ゼラチン食品の発明者)
図2 “Men of Progress”(クリスチャン・シュッセレ画)米国国立肖像画美術館蔵より
左拡大写真の〔下左〕チャールズ・グッドイヤー,〔下右〕ジョーダン・モット(鉄工所創設者),〔上〕ピーター・クーパー(ゼラチン食品の発明者)

この続きをお読みになりたい方は
読者の方はログインしてください。読者でない方はこちらのフォームから登録を行ってください。

ログインフォーム
 ログイン状態を保持する  

    新規読者登録フォーム

    関連記事

    • レゴブロックの世界

      10月に無事終了した大阪・関西万博では,シンボルとなっていた大屋根リングが話題になっていました。高さ約12 m(一部約20 m)で,外径約675 m,周長約2 kmの構造物で,109個の木架構ユニットをつなぎ合わせて造ら […]

      2025.11.06
    • 水素の技術

      地球温暖化対策が叫ばれる中で「カーボンニュートラル」のキーワードで様々な動きが見られます。そのひとつに,燃焼してもCO2を出さない水素の技術が注目されています。特に近年の異常気象などを日常的に経験していると水素技術の開発 […]

      2025.10.10
    • ドン・キホーテのビジネスモデル

      生活スタイルを大きく変えた発明の一つにスーパーマーケットの発明があります。1930年に米国のマイケル・カレン(1884−1936)が開業したスーパーマーケット「キング・カレン」が世界初の店といわれます。購入者がショッピン […]

      2025.09.10
    • 三遊亭圓朝の世界

      今では余り聞かなくなりましたが,日本では昔から暑い夏の時期には花火のように怪談が付き物でした。そんな怪談に関して落語家の三遊亭圓朝(1839−1900/図1)が深く関わっていました。今回は発明や特許には直接関係ありません […]

      2025.08.13
    • プラスチックごみリサイクル技術と特許

      地球環境問題がクローズアップされるようになって久しいですが,解決までにはまだ長い道のりといえます。例えば,2016年に英国でサーキュラーエコノミーを推進するエレン・マッカーサー財団が世界経済フォーラム(WEF)と協力して […]

      2025.07.10
    • ド・オヌクールからダ・ヴィンチへ

      欧州の芸術や科学技術の歴史を振り返る時に,14世紀のルネサンス期や18世紀以降の産業革命が大きな出来事として取り上げられます。しかしその前には“12世紀のルネサンス”と称される時期がありました。そしてその時期の後半にフラ […]

      2025.06.10
    • 都市鉱山(レアメタル)

      近年の小型電子機器や電動車等々で要となる部品はレアメタルによって支えられていると言ってもよさそうです。しかし,稀なる金属の産地は偏在している上に国際情勢が不安定な状況では,素材確保にも大きなリスクが伴います。一方で都市鉱 […]

      2025.05.10
    • 映画史を振り返る

      最近ある方からの話に刺激されて読み始めたのが『アリスのいた映画史(彩流社:吉田はるみ著)』です。映写機の発明といえば米国のトーマス・エジソン(1847−1931)やフランスのリュミエール兄弟(兄:1862−1954,弟: […]

      2025.04.10
    • 円周率(π)あれこれ

      或る資料で「ワーキングメモリ」の記述が目に留まりました。ちょっと気になる認知心理学で用いられる概念で,曰く「作業や動作に必要な情報を一時的に記憶・処理する能力」だそうです。高齢者になるとこの機能が低下するとのこと。その容 […]

      2025.03.10
    • オプトキャリア