臥雲辰致という人

臥雲辰致(がうんたつむね)と言われても誰やら,何者やら,直ぐ分かる人は余りいないのではないでしょうか。実は日本の特許制度制定の陰の貢献者でもあったのです。今回はそんな人の話題です。

臥雲辰致(1842−1900)は江戸時代後期の天保13年に信濃国安曇郡(現長野県安曇野市)の豪農だった横山儀十郎の次男(名は栄弥)として生まれます。父の代に本業がうまく行かなくなり,4歳頃から副業としていた足袋底織の手伝いをしていました。足袋は足の甲の部分と足袋底と呼ばれる足の裏の部分があり,足袋底の方は傷み易いので特殊な織になっています。栄弥少年は「もっとこうすれば…」といった作業の効率化などを考える毎日だったようです。しかし,20歳で近くの寺(法隆山安楽寺)に入寺することになり,7年間の修業を経て安楽寺の末寺である臥雲山孤峰院の住持となります。そして時代が変わり明治になると,一部で仏教の排斥運動が起こり,1871(M4)年にその寺は廃寺になってしまいます。俗人に戻ることになり,名前は寺の山号から臥雲辰致(以下臥雲)と名乗ります。幼少時に足袋底織りを手伝っていた臥雲は経験を生かして綿製品の製造を始めようとするのですが,その頃は多くの綿製品は輸入されていました。それでも臥雲は幼少期の改善意欲が再燃したように外来品に負けない製品を作ろうと織機開発に情熱を注ぐのです。

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