設計特論8—EUV光学系1—

5.6 EUV光学系

半導体露光装置は光による微細加工の代表例である。微細加工における最小解像線幅Rはこれまで何度も出てきた関係式

式(39)  (39)

で示される。式(39)はRayleighの式と言われ,Rを小さくするには短波長化,高NA化,そして比例定数k1を小さくする3つの手段があることが分かる。比例定数k1はフォトレジスト(感光材料),マスク,照明法など投影光学系と独立のファクタから決定される。

Rayleighの式より投影光学系は必然的に高NA化とともに短波長化の道を辿ることとなった。通常の空気雰囲気においてDUVで酸素吸収を回避できる最短波長193 nmに到達した後,材料等の関係から真空紫外を飛び越えて極端紫外EUV(Extreme Ultra Violet)領域が次の対象領域となった。

EUV露光の最初の提案は1986年,日本の木下博雄による1)。応用物理学会での講演は「X線縮小露光の検討(その一)」で波長11 nmを用いた露光結果の発表であった。当時11 nmはX線の領域に属すると見なされていた。EUVと呼ばれるようになったのは国の予算獲得のため等,色々ないきさつがあったとされる。発表当時,X線波長で光のような結像が可能とは考えられておらず,木下は露光結果の正しさの周囲への説得に労を要したと述懐している2)。ちなみにEUV領域において垂直入射で高反射率を持つ膜が発表されたのは1985年で3)木下論文の前年になる。

最初の発表から33年後の2019年,長い開発期間を経てEUVは半導体の量産現場で使われるようになった。1990年代後半に本格的なEUV露光技術の開発プロジェクトがアメリカで始まったが,実用化までこれだけの長期間,開発プロジェクトが継続した例は数少ない。技術的な難度が高かったことは勿論であるが,それだけEUV露光技術に産業界からの要求が高くてサポートがあり,代替の効かない価値を持っていたからと言える。

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