山椒魚は悲しいか?─近接場光の穴─

hikari_1410_01

井伏鱒二の小説で山椒魚が大いに悲しんだのは,苔だらけの岩屋から外に出られなくなってしまったためだ。二年程の思索の時間を過ごすうちに大きくなりすぎてしまった頭が,出口の小さな穴を通らなくなってしまったのだ。それにしても山椒魚君,生まれてこのかた一度も外に出ることもなく,暗がりの中で思索に耽っていたとは大したものだ。

落ち着きのない僕にとっては驚くべき我慢強さである。さて,そんな彼も,ある日,岩屋からの脱出を思い立つのだが,結局,穴に嵌った頭が出口の蓋になるのが関の山であり,たまたま岩屋に入り込んでいた蛙に笑われたりするのである。

この続きをお読みになりたい方は
読者の方はログインしてください。読者でない方はこちらのフォームから登録を行ってください。

ログインフォーム
 ログイン状態を保持する  

    新規読者登録フォーム

    同じカテゴリの連載記事

    • 心霊写真はなぜ怖い 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2025年05月10日
    • マルチプル・ハロ・ディスプレイとの遭遇 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2025年04月14日
    • つららレンズ 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2025年03月11日
    • 本当の風光明媚 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2025年02月10日
    • 夕日と朝日どっちが赤いか 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2025年01月10日
    • 虹の難易度 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2024年12月10日
    • すでにマトリックス 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2024年11月10日
    • 虹色の雲─彩雲か幻日か─ 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2024年10月09日