3. 有機薄膜光集積回路におけるモノリシック集積手法
「モノリシック集積」とは,同時プロセスで,一基板上に全ての多機能素子を一括集積させることであり,光集積回路のおいては必須とされる技術である。従来型の光集積回路においては,単結晶の再成長や選択成長,OQW(Offset quantum well),QWI(Quantum well intermixing)などの様々な技術を用いることで,異なる機能を同一基板上に実現している4)。しかし,有機薄膜材料にはそのような光集積技術のノウハウが存在せず,モノリシック集積に向けた画一的なプロセス手法を作り上げることが必要不可欠となる。
上記を踏まえて,本節では,有機薄膜光集積回路におけるモノリシック集積手法について言及する。本プロセスでは,剥離用のポリイミドを支持基板(Glass, Si, InPなど)に塗布したものを初期基板とし,その後,基板上に適当なポリマーを塗布しながら,各ポリマー層に対して素子作製プロセスを行っていく。
図4に,光伝送路・入出力カプラ・スイッチ・受光器・変調器の各機能を一括で作り上げるプロセスフローの一例を示す。本プロセスでは,コア材料としてPMMA,クラッド材料としてサイトップ(AGC旭硝子)を用いて,下記aからfのプロセスを経ることで,上記機能全てを一括で実現することを考える。各プロセスの詳細は各々以下のとおりである。
f.ドライエッチングによりホールを形成した後,各電極パッドから貫通電極を作製し,最後に支持基板からの剥離を行うことで,有機薄膜光集積回路の完成となる。
上記はあくまでも一例であり,実際には,これを拡張する形で様々なプロセス手法が考えられる。特に,剥離用のポリイミドとして対象波長に対して透明なものを選択すれば,それをそのままクラッド層として利用することもできる(例えば,ECRIOS®は波長400−2000 nmの光に対して透明である)。その場合,より屈折率の高いSU-8(MicroChem)などをコア材料として用いることが望ましい。