広視野レーザ顕微鏡によるナノ表面形状計測技術

3. 広視野レーザ干渉計

広視野レーザ顕微鏡を用いた3次元形状計測技術について紹介する。図1において太枠で囲われた広視野レーザ顕微鏡によって,Ref. plateと書かれた参照板越しに試験片を観察すると,フィゾー型の干渉計として用いることができる。この広視野レーザ「干渉計」を用いて,凹面の3次元形状を計測した例8)を示す。

図3 平面参照板を用いて凹面の3次元形状計測結果
図3 平面参照板を用いて凹面の3次元形状計測結果

この凹部は,サブミクロン程度の形状精度が求められるレンズ金型を模して,0.3 mm厚の銅メッキ層に0.1 mm深さの球面を超精密切削・研磨によって作製したものである。凹部に被せるように参照板を置くと,凹部と参照板それぞれの表面(凹面側)での反射光が2光束干渉を起こす。計測結果は,図3(a)に示すように,球面と平面間で生じる光路差によってニュートンリング状になる。図3(b)はその一部を拡大したものである。この顕微鏡は,20000×16000画素で計測しているため,この図のような高密度な干渉縞の計測が可能となっている。

隣り合う干渉縞の高低差は使用したレーザ波長650 nmの半分である。この画像に二値化,細線化,縞のナンバリング処理を施すことで,等高線として扱うことができる。等高線と等高線の間は最小自乗法による多項式近似によって補間し凹面の3次元形状をプロットすると図3(c)のようになる。また,予め触針式の形状測定機で取得した形状データと比較すると,図3(d)のようにその平均誤差は約77 nmであり,精密なレンズ金型などの3次元形状計測に有用と考えている。

同じカテゴリの連載記事

  • 光周波数コムを用いた物体の運動に関する超精密計測と校正法 東北大学 松隈 啓 2024年11月10日
  • こすると発光色が変わる有機結晶の合理的創製 横浜国立大学 伊藤 傑 2024年10月10日
  • 光ウェアラブルセンサによる局所筋血流と酸素消費の非侵襲同時計測 明治大学 小野弓絵 2024年09月10日
  • 関心領域のみをすばやく分子分析するラマン分光技術 大阪大学 熊本康昭 2024年08月12日
  • 熱画像解析による土壌有機物量計測技術の開発 大阪工業大学 加賀田翔 2024年07月10日
  • 組織深部を可視化する腹腔鏡用近赤外分光イメージングデバイスの開発 (国研)産業技術総合研究所 髙松利寛 2024年06月10日
  • 8の字型構造の活用による高効率円偏光発光を示す第3世代有機EL材料の開発 名古屋大学 福井識人 2024年05月07日
  • 高出力半導体テラヘルツ信号源とその応用 東京工業大学 鈴木左文 2024年04月09日