表面プラズモン共鳴励起を利用したセンサー・デバイス応用

2. 導電性高分子薄膜の電気化学的制御による
表面プラズモン共鳴透過光スイッチング

近年,金属ナノホールアレイを用いることにより,表面プラズモン共鳴による異常光透過現象が観測され,フィルタを始め様々なプラズモニックデバイスへの応用が考えられている16)。さらに,最近グレーティング金属薄膜を用いることにより同様の現象が起こることが確認されている17)

グレーティングカップリング表面プラズモン共鳴法は,金属で覆われたグレーティング基板上に入射した光の波数にグレーティングベクトルが足しあわさることにより,表面プラズモンの波数と一致して表面プラズモンを共鳴励起する方法であり,プリズムを必要としないことなどから,実用的なセンサーやデバイスへの応用が検討されてきている。

図1 (a)電気化学測定と組み合わせたグレーティングカップリング透過型プラズモン共鳴測定配置と(b)p偏光,s偏光で入射した場合の透過光強度
図1 (a)電気化学測定と組み合わせたグレーティングカップリング透過型プラズモン共鳴測定配置と(b)p偏光,s偏光で入射した場合の透過光強度

図1(a)のような配置で光を入射した場合,ある条件で表面プラズモンが金薄膜表面に共鳴励起する。この時,入射光のエネルギーは表面プラズモンの共鳴励起に奪われ,反射光,透過光もほとんど観測されない。しかしながら,この金属薄膜/溶液界面に励起した表面プラズモンの回折光や,わずかに透過した光が金属薄膜/基板界面におけるもう一方の表面プラズモンを共鳴励起し,金属薄膜の表裏両方の表面プラズモンが相互作用してある条件を満たすとき,裏側から輻射され表面プラズモン励起波長を観測することが可能となる。

図1(b)に,表面プラズモンが励起した場合(p偏光入射)と表面プラズモン励起がない場合(s偏光入射)の表面プラズモン励起透過光スペクトルを示す。図のように,ある条件で表面プラズモンを裏側から輻射した場合,特定の波長が透過してくることが分かる。我々は,導電性高分子薄膜を用いたグレーティングカップリングによる透過型表面プラズモン共鳴制御やバイオセンサーへの応用,さらに透過型表面プラズモン共鳴励起信号増強などに関する研究を行ってきている13〜15)

ここでは,導電性高分子を電解重合法により金薄膜/グレーティング基板上に堆積させ,電気化学的に制御することにより透過型表面プラズモン共鳴波長の光スイッチング特性が得られることを示し,アクティブプラズモニックデバイスへの応用を検討した。

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