表面プラズモン共鳴励起を利用したセンサー・デバイス応用

3. 透過型表面プラズモン共鳴法による
ポリピロール誘導体薄膜上ヒトIgGの検出

これまでに我々は,機能性導電性高分子を利用した全反射減衰法(クレッチマン配置)による表面プラズモン共鳴法を用いて種々のバイオセンサーの報告を行ってきている18)。また最近,機能性導電性高分子上に抗体を固定化し,抗原の検出を行ってきており,そこでは,電気化学的に電位を制御することで導電性高分子の形状を制御し,固定化面積を増大することにより抗原の検出感度向上が得られた結果を報告している19, 20)

さらに,近年我々はグレーティングカップリング表面プラズモン共鳴法を利用した透過型での簡便な表面プラズモン共鳴センサーへの応用に関する研究を行ってきている13)。ここでは,機能性ポリピロール誘導体薄膜を電解重合法により金薄膜グレーティング上に堆積し,その上に抗ヒトIgGを固定化することでヒトIgGの検出を試みた例を紹介する。

3.1 実験結果と考察
図4 ポリピロールカルボン酸薄膜上の抗ヒトIgGの固定化とIgG検出の概略図(a)とT-SPRキネティック特性(b)(1.ポリピロールカルボン酸(PP3C)薄膜表面のEDC/NHSによるカルボキシル基の活性化,2.抗ヒトIgGの固定化,3.エタノールアミン(EA)による残留活性部位の不活性化,4.ヒトIgGの検出)
図4 ポリピロールカルボン酸薄膜上の抗ヒトIgGの固定化とIgG検出の概略図(a)とT-SPRキネティック特性(b)(1.ポリピロールカルボン酸(PP3C)薄膜表面のEDC/NHSによるカルボキシル基の活性化,2.抗ヒトIgGの固定化,3.エタノールアミン(EA)による残留活性部位の不活性化,4.ヒトIgGの検出)

まず図4(a)に示すように,ポリピロールカルボン酸(PP3C)薄膜(約16 nm)を電解重合法により金薄膜/クロム/グレーティング上に堆積した。次に,EDC/NHSによってPP3C表面のカルボキシル基にEDCを反応,結合させた。ついでEDCにNHSが反応して活性化された表面に,抗体であるAnti-IgGを反応させて固定化し,反応残基をEA-HClで不活性化しIgGバイオセンサーとした。

次に,ヒトIgG検出までの各過程における透過ピーク波長の強度変化を図4(b)に示す。図から,それぞれの過程において透過光強度が増加していることが分かる。理論計算より,この領域において透過光強度は物質の堆積膜厚に対してリニアに増加することが分かっており,測定結果からもそれぞれの過程における堆積過程の評価を行なえることが示された。

関連記事

  • 地球と人工知能を繋ぐ光ファイバーセンサー

    図5に野外実験の結果を示す。図5(a)はRAWデータである。縦軸はセグメント数,横軸は距離,画像の色は瞬時位相を示している。図5(b)は,RAWデータをPIXART-Σの初期ノイズとして利用して生成した画像である。図5(…

    2026.02.26
  • 安定な有機光触媒を利用した光触媒反応の開発

    ミニインタビュー 田中先生に聞く 高還元力光触媒という新しい挑戦 ─研究を始めたきっかけから (田中)私は博士課程の頃から光触媒の研究に取り組み,主に酸化力の高い触媒の開発を進めてきました。3年前に岡山大学に着任したこと…

    2026.02.12
  • フォトサーマルナノポアによる単一分子レベルでのラベルフリータンパク質構造ダイナミクス解析技術

    ミニインタビュー 山崎先生に聞く レーザー加熱ナノポア計測の挑戦と未来 ─先生のご研究について紹介いただけますか。 (山崎)私たちは,ナノスケールの小さな孔(ナノポア)を利用した先進的な計測技術の開発に取り組んでいます。…

    2026.01.13
  • 超低電圧で発光する青色有機EL素子の開発

    ミニインタビュー 伊澤先生に聞く 異分野から切り拓く青色有機ELの世界 ─研究を始めたきっかけを教えてください。 (伊澤)もともと私は有機太陽電池の研究を行なっていました。太陽電池の効率を上げるためには,デバイス自体を光…

    2025.12.10
  • イベントベース計算撮像による光沢・透明物の外観検査

    5. 社会実装への挑戦 本技術を社会実装するため,筑波大学ベンチャー起業支援事業「つばさ」を通じて,研究開発と事業開発に取り組んできた。2025年現在,GTIE(Greater Tokyo Innovation Ecos…

    2025.11.10

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア