1. はじめに
表面プラズモン共鳴励起測定法は,金属薄膜/誘電体界面の光学情報を高感度に得ることのできる測定法である1)。そして,電気化学装置と組み合わせた表面プラズモン共鳴法の場合,表面プラズモン励起のために利用される金属薄膜が,同時に電気化学での作用電極としても用いることができるため,金属薄膜表面の光学情報と電気化学情報を同時に得ることができる2〜4)。このような電気化学と組み合わせた表面プラズモン共鳴法は,導電性高分子を媒介としたセンシングにおいては,光と電気化学信号の両方を高感度に検出できる非常に有効な測定法でもある5〜10)。
導電性高分子の可逆的なドーピング−脱ドーピングは,多くの場合電気化学的に行われ,共役系高分子とドーパント,または電極との間の電子の授受が行われることにより金属-絶縁体転移を起こし,その電気特性が変化する。また,多くの導電性高分子は,可視光領域付近にエネルギーバンドギャップを有し,ドーピング−脱ドーピングによりバンド状態が変化し,吸収特性が大きく変化する。このエレクトロクロミズムにより,光学特性が大きく変化する。このような特性変化を利用してセンシング材料としても用いることができ,電気信号・光信号の両方での検出が可能である。
バイオセンサーのトランスデューサー部として用いたとき,生体分子の吸着により電子状態が変化し,光学的特性・電気化学的特性が変化することにより,高感度なセンサーを構築することが可能である11, 12)。また最近になり,透過型表面プラズモン共鳴法による表面プラズモン異常透過光が観測されており,簡便なセンサーへの応用の可能性が検討されている13〜15)。
ここでは,導電性高分子のドーピング・脱ドーピングによる電気特性,光学特性の変化を利用した透過型表面プラズモン共鳴特性の制御による能動的スイッチング素子やバイオセンサーへ応用を行った最近の研究を紹介する。