立命大,簡易でエコな銅のフレキシブル透明電極開発

立命館大学大学の研究グループは,簡易かつ低環境負荷な微細加工技術を用いた銅のフレキシブル透明電極の開発に成功した(ニュースリリース)。

フレキシブル透明電極は,太陽電池,ディスプレー,タッチスクリーン,LEDなどのオプトエレクトロニクスデバイスに不可欠な構成要素。従来よく用いられているITOなどの酸化物系透明電極は脆く,変形への耐久性に課題があるため,微細な金属ワイヤやパターンの利用によるフレキシブル透明電極が広く研究されている。しかし,従来のパターン形成技術は高価な装置や化学薬品を必要とし,工程が複雑であるため,コストや環境負荷の面で課題があった。

研究グループは,ポリエチレンテレフタレート(PEM)を用いた新規低温加工プロセスにより,フレキシブルなPET基板上の銅に微細なパターンをダイレクトに形成することに着想した。微細な凹凸パターンを有する「PEMスタンプ」を用い,パターン面が銅と接触するように対向電極で挟んだ電気化学システム(対向電極(陰極)/PEMスタンプ/銅(陽極))を構築し,電圧を印加する。これにより,銅とPEMの接触点でのみ局所的な電気化学反応が発生し,銅が選択的に溶解する。

結果として,スタンプを押すように銅表面に微細なパターンを形成することが可能となる。溶解した銅は銅イオンとなってPEM中を移動し,対向電極(陰極)側へ輸送される。PET基板上に形成された銅の微細配線パターンは,フレキシブル透明電極として機能し,以下の特性を示した。

①柔軟性:基板の曲げや変形に対応可能,②光透過性:ディスプレー上に配置した際に文字が透過して見える,③電気伝導性:曲げてもLEDを正常に点灯可能 

また,PEMスタンプは繰り返し長期間の使用が可能だが,PEMスタンプを使用し続けると加工性能が劣化した。そこで,研究では簡易的な再生処理を開発し,スタンプの加工性能を回復できることを実証した。

この再生処理では,電圧の極性を逆にすることで,PEMスタンプ内に蓄積した銅イオンを他の基板上に析出・排出し,化学薬品を用いることなくPEMスタンプの再利用を可能にする。これにより,繰り返し利用が可能となり,大面積基板への適用や連続プロセスへの応用が期待されるという。 

研究グループは,産業レベルでの活用が期待される成果だとしている。

その他関連ニュース

  • 名大ら,大量生産可能なCNTで透明電極を作成 2022年03月15日
  • 東大ら,赤外透明電極の合成に成功 2022年01月05日
  • 東北大,光学的に優れた大面積ZnO薄膜を作製 2021年08月02日
  • 産総研,透明酸化物電極の高性能化に知見 2021年07月09日
  • 阪大,高透明度・高導電性の透明電極を開発 2020年12月12日
  • 東大ら,酸化スズ薄膜透明電極で最高の移動度達成 2020年04月23日
  • 都市大,希少金属不要の有機透明導電材料を開発 2018年12月03日
  • 早大,メッシュ構造でITO透明電極のフレキシブル化に成功 2018年02月13日