産総研,透明酸化物電極の高性能化に知見

産業技術総合研究所(産総研)は,透明酸化物電極(透明電極)を有する透明有機デバイスにおいて,透明電極の結晶化が性能向上に有利とする従来の予想を覆し,透明電極の結晶化を阻害することで,性能が大幅に向上することを見出した(ニュースリリース)。

従来の非透明な有機デバイスは,窓のように透明性が要求される場所やデザイン性が求められる場所への設置は困難であるため,有機デバイスの透明化が求められていた。これまで研究グループは,透明電極を結晶化させることでデバイス性能の向上を試みていた。しかしながら,結晶化した透明電極を用いた場合,むしろデバイス性能が低下してしまうという結果が得られた。

この原因を解析した結果,結晶化した透明電極を用いたデバイスにおいては,透明電極下の電荷注入層/有機薄膜界面にギャップが形成されており,このギャップがデバイス内の電気伝導を阻害するために性能が低下してしまうことを,今回初めて明らかにした。

続いて,ギャップの形成メカニズムの解析から,透明電極の膜内応力を低下させることでギャップ形成が抑制され,デバイス性能が向上すると考えた。一般に酸化物薄膜の膜内応力は,膜の結晶性を下げると低減することから,従来概念では結晶化度を高めて電気伝導性を高めようとするところを,むしろ逆に,透明電極の結晶化を意図的に阻害した方が,デバイス性能が向上するのではないかと着想した。

そこで,透明電極製膜中に結晶化を阻害する微量のガスを導入することで応力を低減し,ギャップの形成を抑制することを試みた。なお,透明電極としては対向ターゲットスパッタリング法を用いて作製したインジウム・錫酸化物(ITO)を用いた。

ITOの結晶化を阻害することで膜内応力は約1/4に低減した。続いて結晶化を意図的に阻害した透明電極を有する有機電界発光デバイスを作製し,その特性を評価した。透明電極の結晶化を阻害し,応力を低減した結果,ギャップの無いデバイスの作製に成功した。

また,ギャップが無くなることで,実際にデバイスの電流-電圧特性,及び発光特性が大幅に改善した。このように,透明電極の結晶化を阻害することで,デバイス性能が改善することを実証した。

この知見は,高性能な透明有機デバイスを実現する上で重要となるもの。研究グループは,高性能な透明有機デバイスを実現できるようになれば,窓のように透明性が要求される場所へも有機デバイスの搭載が可能となり,その用途が大きく広がるとしている。

その他関連ニュース

  • 東大ら,有機半導体の電子ドーピング技術を独自開発 2024年05月23日
  • NHK技研,伸縮可能なフルカラーディスプレーを開発 2024年05月22日
  • 東大ら,交互積層型の電荷移動錯体の高伝導化に成功 2024年04月17日
  • 理研ら,全塗布で3層構造の有機光電子デバイス集積 2024年04月11日
  • 東大,極性単結晶薄膜を塗布形成できる有機半導体開発 2024年01月30日
  • 中大ら,薄くて柔らかいシート型光センサを開発 2024年01月23日
  • NIMSら,プリント向け厚膜導電性インクを開発 2024年01月16日
  • 千葉大ら,半導体の励起子束縛エネルギーを精密測定 2023年12月13日