
光産業技術振興協会は,「第40回櫻井健二郎氏記念賞」の受賞者を発表した。この賞は,元電子技術総合研究所 電波電子部長,元同協会理事の故櫻井健二郎氏が光産業の発展に尽くした多大なる功績をたたえるとともに,光産業及び光技術の振興を図ることを目的として創設したもので,光産業技術の分野において先導的役割を果たした業績に対して表彰するもの。
今回,個人受賞として,横浜国立大学 大学院工学研究院・教授の馬場俊彦氏,グループでの受賞として,住友電気工業・光通信研究所の春名徹也氏,林哲也氏,長谷川健美氏,佐久間洋宇氏がそれぞれ受賞となった。
馬場氏はシリコンフォトニクス分野の研究を牽引してきた研究者として広く知られているが,今回,「シリコンフォトニクス基盤技術の先駆的な研究とその応用開拓」で受賞。その理由について光産業技術振興協会はシリコンフォトニクスの基盤技術とCMOSプロセスを用いた光集積回路の開発において優れた成果を挙げたこと,今後は産業界との連携強化により,我が国の光産業の発展にさらなる貢献が期待できることが評価された。
住友電気工業のグループは「海底ケーブル用極低損失2コア型マルチコア光ファイバの開発と実用化」での受賞となった。
近年のIoTやAIの急速な発展を背景に,情報通信量は年率30%以上の増加を続けており,光通信技術においてもその大容量化が求められていた。同グループが研究開発ならびに実用化したマルチコア光ファイバは,将来の大洋横断級の海底系や陸上系の超大容量情報通信システムに繋がる画期的なもので,マルチコア光ファイバの低損失化・低クロストーク化・長尺化に果敢に挑戦し,その実用化に向けて長年にわたり研究開発を精力的に進めてきた。
2023年には,世界に先駆けて海底ケーブル用極低損失2コア型マルチコア光ファイバを実用化したことで,光通信技術の大容量化に関する新たな道を切り開いたと評価され、受賞に至った。