静岡大学,岡山大学,京都大学は,珪藻Thalassiosira pseudonanaから光化学系 I(PSI)とフコキサンチンクロロフィル結合タンパク質(FCP)の超複合体(PSI-FCPI)を精製し,その構造をクライオ電子顕微鏡による単粒子構造解析で明らかにした(ニュースリリース)。
微細藻類である珪藻のFCP遺伝子は,Lhcf,Lhcq,Lhcr,Lhcx,Lhcz,Lhcr9 homologに分類され,それらの合計が四十数個になる。また,珪藻はFCP遺伝子とは進化的に離れているRedCAP遺伝子も有す。多様性のあるFCP遺伝子だが,そのすべてがPSIやPSIIに結合するわけではなく,FCPがPSIを認識して結合するメカニズムは不明だった。
研究グループは,珪藻T. pseudonanaからPSI -FCPIを精製しその立体構造をクライオ電子顕微鏡単粒子構造解析により明らかにした。構造解析の結果,PSI-FCPIは,PSI 単量体と5個のFCPIから構成されていた。
FCPIは,それぞれFCPI-1からFCPI-5と命名し,それらを構成する遺伝子はRedCAP,Lhcr3,Lhcq10,Lhcf10,Lhcq8であることを見出した。さらに,FCPI間,およびFCPIとPSIとのタンパク質間相互作用部位を明らかにした。
珪藻C. gracilisではPSI-FCPI構造が解かれている。二種類の珪藻のPSI-FCPI構造を重ね合わせ,FCPI-1から FCPI-5までを比較した。その結果,FCPIとPSIとのタンパク質間相互作用が両種で高度に保存されていた。
さらに,FCPの分子系統解析の結果,T. pseudonanaのRedCAP(TpRedCAP),TpLhcr3,TpLhcq10,TpLhcq8が,C. gracilisのRedCAP(CgRedCAP),CgLhcr1,CgLhcr9,CgLhcq12のそれぞれとオーソログ関係にあることを見出した。
T. pseudonanaには44個,C. gracilisには46個のFCP遺伝子がそれぞれゲノムにコードされている。T. pseudonanaの場合,そのうちの4個とRedCAPがPSIに結合していることになる。44個のFCPはお互いに相同性をある程度持ち,タンパク質構造が極めて類似している。FCPが何を認識してPSIの決まった場所に結合するのか,二種類の珪藻のPSI-FCPIを比較することで初めて明らかになった。
研究グループは,この研究で得られた研究成果は,FCPの進化を理解するうえで重要な知見となるとしている。