名城大学の研究グループは,液体のエタノール中で単層カーボンナノチューブ(単層CNT)を作り出す方法を開発した(ニュースリリース)。
現在,CNTの作製には,炭素を含む原料ガスを触媒金属と高温で反応させる化学気相成長法(CVD法)が主流となっている。特に触媒粒子に粒径数nmの金属粒子を用いた場合,生成するCNTの直径が細くなり,単層CNTを得ることができる。
CVD法は大量生産に適した優れた手法だが,気体の原料を使用するため真空ポンプやガス流量制御器等の高額な装置が必要。一方,有機溶媒中で金属触媒を加熱することでCNTを得る“液相合成法”が試みられてきた。
この手法は安価な装置のみでCNTの合成が可能だが,生成されるCNTの大部分が複数のグラフェン層から成る多層CNTとなっており,より優れた電気的性質を示し,様々な応用が期待されている単層のCNTを得ることは困難だった。
研究グループは今回,気相合成に用いられるものと同等の粒径数nmのCoおよびIrナノ粒子を用いて液相合成を行なった。これらの触媒粒子をSiO2/Si 基板に堆積し,基板を通電加熱することにより常温の液体のエタノール中で触媒周辺のみを高温に保った。
なお,反応中のエタノールの蒸発を抑えるため還流冷却器を取り付け,さらにエタノールの入った容器全体を氷水で冷やしながら実験を行なった。Co触媒の堆積量を調整することで,加熱温度700℃において繊維状の単層CNTが絡まり合った状態で基板上に生成された。
生成された単層CNTの結晶性は良好で,気相合成に匹敵するものもあったという。また,Irを触媒に用いた場合,Co触媒に比べると生成量は少ないが,直径1nm以下の細径の単層CNTを得ることができた。
研究グループは今後,触媒金属種や合成に用いる炭素原料液体の種類を工夫することで,液相合成法による単層CNTの大量合成を安価に実現できる可能性が高まるとしている。