東工大ら,非周期結晶構造を理論的に提唱

東京工業大学,名古屋大学,豊田理化学研究所,近畿大学は,準結晶と不整合変調構造の性質を併せ持つ非周期結晶構造を発見し,超空間の枠組みの中で準結晶と不整合変調構造を包括的に記述できることを明らかにした(ニュースリリース)。

非周期結晶は,準結晶や不整合変調構造などの原子配列構造が周期性を持たない物質群を構成している。これらは超空間という概念において共通の基盤を持っているが,両者の関係は謎に包まれたままであった。

研究グループは,任意の自然数kにより特徴付けられる6回対称貴金属比準結晶タイリングを理論的に提唱した。今回提案したタイリングの重要な性質は,kの増加とともに大きな六角形が連結したドメインが占める割合が増加し,発散極限においてハニカム格子に収束する。このため,従来の概念である近似結晶の逆転的発想として近似準結晶と呼ぶことができるものとなっている。

さらにこの研究では,この近似準結晶は平行四辺形からなるドメインウォールによって変調されたハニカム格子として見なせることを見出した。k=1では回折強度の大きいメインピークの位置に貴金属比の自己相似性が現れ,準結晶の性質が強く現れた。kが大きくなると,ハニカム格子に特徴的なメインピークが周期的に配列している一方で,その周りに不整合なサテライトピークが存在している。

これは,不整合変調構造の帰結となっている。これまで準結晶と不整合変調構造は相容れない構造クラスであると考えられていたが,今回の研究によって準結晶と不整合変調構造の性質を併せ持つ非周期結晶構造の存在が明らかとなった。

次に,この近似準結晶における超空間の枠組みを実際の不整合変調構造へ応用することで,その超空間における結晶格子構造を求めることに成功した。特にこの解析の中で,平行四辺形によるドメインウォール構造がハニカム格子に超空間次元を与えるという重要な役割を担っていることが明らかとなった。

さらに,ポリイソプレン・ポリスチレン樹脂・ポリの複合高分子系の電子顕微鏡写真にみられるハニカム構造とドメインウォール構造の中に,6回対称貴金属比準結晶タイリングに対応する構造が存在していることも分かった。

以上の結果から,提案した6回対称貴金属比準結晶タイリングは準結晶と不整合変調構造を橋渡しするものであり,近似準結晶の超空間の枠組みを用いて非周期結晶を包括的に記述できることを明らかにした。

研究グループは,3次元系や正方対称系における近似準結晶理論を構築することで,超空間における準結晶と不整合変調構造の関係の更なる理解に繋がるとしている。

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