東大,シリコンの非晶質・非晶質転移の機構を解明

東京大学の研究グループは,急激な圧力変化によるシリコンの非晶質・非晶質転移に伴う構造の時間変化を分子動力学シミュレーションによって詳細に調査した(ニュースリリース)。

炭素のグラファイトとダイヤモンドのように,単一組成の原子や分子から成る物質でも,複数の結晶形態を持つことがある。この現象は結晶多形として知られており,非晶質状態でも異なる形態が存在し,これらの異なる非晶質の状態間の遷移は非晶質・非晶質転移と呼ばれている。

液体状態の急冷により得られる非晶質状態は,通常物質ごとに一つしか存在しないが,シリコン,水,シリカなどの物質においては複数の非晶質状態が存在することが知られている。しかし異なる非晶質・非晶質転移がどのような機構で起こるのかは未解明であった。

研究グループは,高度な機械学習と局所構造解析を駆使して,急激な圧力変化により引き起こされるシリコンにおける非晶質・非晶質転移の微視的なダイナミクスを研究した。

この結果,常温で3つの非晶質形態(低密度非晶質:LDA,高密度非晶質:HDA,超高密度非晶質:VHDA)が同定され,それぞれの相の構造を特徴づける構造秩序変数の特定に成功した。これにより,これらの状態間の転移,さらにはより密度の高い結晶への転移の動的な経路とメカニズムを明らかにした。

LDAからHDAへの転移では,非球状の界面を持つHDAの核がLDAの中に形成され,時間とともに成長する核生成・成長型転移が観測され,界面のラフネスなどその過程が固体相転移特有の力学因子により強く影響を受けていることが明らかになった。

一方,急激な圧力減少時のHDAからLDAへの逆方向の転移は構造秩序の揺らぎが持続的に発展するスピノーダル分解型の転移過程を示すことが明らかになった。また,さらなる圧力印加により,LDAはVHDAに転移するが,両相間に直接的な遷移経路は存在せず,中間状態としてHDAを経由することが明らかになった。

また,最終的に形成されたVHDA状態は本質的に不安定であり,さらに高密度の結晶に転移することを見出した。この結晶化過程で,最終的に安定な単純六方晶(sh結晶)の形成は,β-Sn結晶として知られる中間状態を含む2段階のプロセスを経ることが明らかになった。

また,これらの過程すべてで,非晶質状態の前駆的な構造秩序化が転移の引き金になっていることが明らかになり,変換に伴う熱力学的・力学的障壁を低減する上での重要な役割を果たしていることが示された。

研究グループは,この研究成果は,新しい非晶質材料の設計や高圧下での非晶質物性が重要な鍵を握る地球科学分野の進展に貢献することが期待されるとしている。

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