沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究グループは,太陽光発電システムから生み出されるエネルギー量の変化を予測する方法を模索し,様々な地域で観測される明確な発電量の変動を考慮に入れ,太陽光発電所での発電量の経時変化を研究する方法を開発した(ニュースリリース)。
風力や太陽光のように変動性の高い再生可能エネルギーを送電網に組み込む場合,送電網統合問題が発生する。需給を監視するセンサーを備えたスマートグリッドは,必要な場所に電力を迂回させたり,エネルギー使用量を微調整したりすることができるため,解決策の一部となり得る。しかし,そのようなネットワークを設計するには,様々なエネルギー生産のシナリオを理解しなければならない。
太陽光発電出力の変化を調べるにはパワースペクトルという概念を用いる。パワースペクトルは,世界中にある個々の太陽光発電所の異なるタイムスケールにおける発電量変動の定量化と,太陽光発電システムの効果的な計画や運用に役立つ。
しかし,雲の量や空気中のちりやほこりなどの環境要因の変化によって,エネルギー出力が断続的で不確実になるため,異なる太陽光発電所間で測定値を比較することは難しい。
今回,研究グループは,2019年に発表した研究を発展させた。その研究では異なる場所での太陽光発電の変化を計算するための晴天指数を分析していた。晴天指数は,晴天条件下で地表に到達する総太陽射量を示す。この指数は,気象学者や研究者が,雲やエアロゾル,その他の大気条件によって,理想的な晴天条件からどれくらい逸脱するのかを理解する際に役立つ。
太陽放射照度の変動は,晴天が仮定された場合におけるその位置のシグナルである晴天シグナルと特定の環境要因に依存する。晴天シグナルは位置と日照時間に依存するため予測可能だが,大気の性質に影響するような環境要因は予測が不可能。
研究グループは,ネゲブ砂漠とインド洋の赤道に設置したブイの2地点のデータを使い,晴天シグナルとこれらの地点で実際に測定された晴天放射シグナルを計算した。その結果,頻繁に起こる太陽放射の変化は,予測不能な環境変化と関連しているのに対し,中間的な頻度で起きる変化は晴天パターンと関連していることが明らかになった。
研究グループは,この新しい方法を使うことで,将来的には,太陽光発電所の規模や,エネルギー吸収に影響する特定の要因が,様々な場所で太陽光発電にどう影響するかを研究できるようになるとしている。