矢野経済研究所は,国内の立体ディスプレー市場を調査し,製品別や参入企業各社の動向,将来展望などを明らかにした(ニュースリリース)。
それによると,空中ディスプレーやホログラムディスプレー,裸眼3Dディスプレーで用いられている光学素子や原理は世界的には100年以上前に既に発見されている。
当時,その原理に合う必要な技術の開発が難しい状況であったことから,立体ディスプレーはある程度の性能の製品開発にとどまっていた。現在,当時では難しかった関連技術の確立や製品開発環境も整いつつあり,立体ディスプレーの需要拡大と立体ディスプレー含めたものづくりの技術発展が期待されている。
今回の調査では,空中ディスプレー,ホログラムディスプレー,裸眼3Dディスプレーの3種類の立体ディスプレーを対象とした。これらの立体ディスプレーに使用されている光学レンズやプレート部材等の立体ディスプレー部材の国内市場規模(メーカー販売価格ベース)は2022年は9億1,800万円と推計,2023年が前年比128.1%の11億7,600万円を見込むとしている。
市場は,2020年以降のコロナ禍により製品の実物を見て体験できる対面での展示会といったイベントが激減したことで冷え込んだ。
2023年には行動制限が緩和されて対面イベント開催が増加し,出展あるいは別製品をアピールするための展示用として立体ディスプレーが活用されたことで,市場は回復傾向にある。実装先の業界開拓も進んでおり,認知度が向上したことで立体ディスプレーの導入検討や実装が増加してきている。
今回の調査では,空中ディスプレーやホログラムディスプレーなどの立体ディスプレーが,車載ディスプレーとして実装される検討が進められていることに注目した。
自動車業界では,安全性や製造ラインの認証を取得するため,どのような部品でも導入検討には5年程度必要とされている。立体ディスプレーでも,そうした自動車業界の厳しい認証工程をクリアするために,以前から水面下で製品開発,改良が行なわれている。
特に空中ディスプレーは2020年代以降,本格的な製品技術の確立が進められてきているが,既存のタッチパネルディスプレーと比較すると高コストや筐体の厚みなど課題点は山積している。
立体ディスプレーの自動車への実装は,業界としては2030年代が目標とされており,空中投影画面を操作して運転ができる近未来な自動車の実現が期待されているという。
将来展望については,2020年代後半になると,立体ディスプレーのうち,特に空中ディスプレーとホログラムディスプレーは技術開発と併せて,試作製品レベルで製品製造を行なってきた各企業で量産体制の調整が進んでいく見込みだという。
光学レンズやプレート部材の単価が落ち着いていくとともに,立体ディスプレーの需要が増加することで,2027年の立体ディスプレー部材の国内市場規模は17億1,700万円に拡大すると予想した。
既に技術面で成熟しているLEDなど既存の平面ディスプレーと比較して,立体ディスプレーは筐体の厚みなどが劣る。一方で,立体ディスプレーでしか出来ない空中投影技術やそれに伴う付加価値(インパクトや影響力が高い映像を視聴者が体験できる)などがメリットとなる。実装が拡大することで,将来的にはモビリティやエンタメといった様々な業界での活躍が期待されるとしている。