東京大学と国立天文台は,ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の分光観測データを使い,134億光年かなたの宇宙に明るく輝く2つの銀河の正確な距離を測定することに成功した(ニュースリリース)。
138億年前に宇宙が生まれた「宇宙の夜明け」の時代は,宇宙の歴史の中でまだ探査されおらず,特に初代銀河がいつ頃形成し,どのような性質を持っていたのかはわかっいない。
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は,他の望遠鏡と比べ10倍から1000倍高い感度を赤外線の波長で実現することで,実際に134億年前から136億年前の最遠方宇宙に存在する銀河の候補を多数見つけている。しかしこれらの天体の距離を決定するには分光観測が必要となる。
研究グループは,ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって取得された分光観測データを精査することで,134億年前の銀河の候補であった2天体から酸素の輝線と水素による吸収を高精度(99.9999%以上の有意度)で検出し,それぞれの正確な距離を134.0億光年・134.2億光年と決定することに成功した。
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の非常に感度の高い観測により,134億年前の銀河から良く見られる水素による吸収だけでなく酸素の輝線も高い精度で検出し,銀河までの正確な距離を測定することに成功した。
天体の観測史上最遠方である134億-135億光年かなたの宇宙では,これまでに3個の銀河が分光観測により存在を確認されていたが,この結果が理論予測と矛盾しているのかどうかはわかっていなかった。
今回新たに2個の銀河が加わったことで,宇宙誕生後3億年から4億年という初期の宇宙に合計5つの銀河の存在が確認されたことになった。この5つの銀河の発見は,ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡打ち上げ前に出版されたどの理論モデルでも予言されていなかったという。
さらに研究グループは銀河の明るさから星がどれくらいのペースで誕生しているか調べたところ,134億-135億光年かなたの宇宙ではモデルの予測に比べて星の誕生率が4倍以上であり,予想よりも短い時間で次々と星が誕生していることがわかった。
研究グループは,この結果は初代銀河を含む宇宙初期の銀河の形成過程が,従来考えられていた理論とは異なる可能性を示すものだとしている。