NICT,光の配光角を制御できる深紫外LEDを開発

情報通信研究機構(NICT)は,ナノ光構造技術により光の配光角を制御し,極めて高い指向性を有するオプティクスフリー深紫外LEDの開発に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

深紫外LEDを用いた表面・空間の殺菌や自由空間光通信用途における実用化の際には,人体等への安全性を確保するために,照射が必要な箇所のみに選択的に深紫外光を照射する技術が求められる。

一般に,LEDから放射される光は全方位に拡散されるため,これまでは,外部取付のレンズや光学部品を用いて光の配光角が制御されてきた。しかし,深紫外LEDの場合,一般的な光学ガラスレンズでは深紫外光が吸収されてしまうため,深紫外域で透明性の高い高純度の合成石英レンズを用いる必要があった。このため,システム全体のコストが極めて高くなってしまう問題があった。

今回,研究グループは,ナノ光構造技術により,オプティクスフリーで光の配光角を制御できる深紫外LEDの開発に成功した。窒化アルミニウム(AlN)光出射面に形成したナノオーダーの位相型フレネルゾーンプレート構造と,窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)マイクロLED構造を組み合わせることで,光学レンズを用いることなく,光放射をビーム形状(配光角の半値全幅(FWHM): 10°以下)にコリメートした高指向性深紫外LEDを実証した。

また,この構造は,深紫外LEDの光取出し効率の向上にも有効であり,配光角を制御できると同時に,その光出力を大幅に向上(約1.5倍)させる効果があることも明らかにした。

今回の成果は,高コストのレンズや光学部品を用いることなく,通常,全方位に広がってしまう深紫外LEDの配光角を極めて狭角に制御できることを示した世界初の実証例となるという。

研究グループは,殺菌から医療,センシング,環境,光加工,ソーラーブラインド光無線通信応用まで,多岐にわたる分野において,深紫外LEDを活用した光システムの応用の幅を広げ,その安全性,効率性,生産性を飛躍的に高める技術として期待されるとしている。

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