シャープ,太陽電池モジュールで変換効率33.66%達成

シャープは,NEDOの「移動体用太陽電池の研究開発プロジェクト」において,化合物2接合型太陽電池モジュールとシリコン太陽電池モジュールを組み合わせた積層型太陽電池モジュールで,世界最高の変換効率33.66%を達成した(ニュースリリース)。

エネルギー需要の大部分を化石燃料に依存している運輸業界では,CO2排出量削減や大気汚染対策の取り組みの一つとして電動車を導入する動きが加速しており,その効果を最大限に引き出すために再生可能エネルギーからの電力供給が期待されている。

また,電気自動車などの移動体に太陽電池を搭載することで,再生可能エネルギー由来の電力を直接供給でき,燃料費や充電回数の削減など,ユーザーの利便性向上が期待されるという。

このような背景から,広く一般の電気自動車や宇宙・航空分野などの移動体に搭載されるための技術開発として,高効率,低コストで移動体に搭載可能な太陽電池モジュールの開発に取り組む中,世界最高の変換効率33.66%を達成した。

モジュールのベースとなるセルについて,これまではインジウム・ガリウム・ヒ素をボトム層とする3つの光吸収層を積み上げる化合物3接合型太陽電池セルを採用していたが,インジウム・ガリウム・リンおよびガリウム・ヒ素の化合物2接合型セルをトップ層に,シリコンセルをボトム層に配置した新構造に変更。

トップ層の化合物2接合型セルには,薄層でも高効率化でき,ボトム層への光透過率を向上させる工夫が施されており,さまざまな波長の光を効率的にエネルギー変換することが可能となった。また,化合物2接合型セルの厚さは,従来の化合物3接合型セルから3分の1以下に薄層化できることから,材料コストの低減が期待されるとしている。

同社は化合物3接合型太陽電池セルにおいて,2013年4月に小サイズ(面積1.047cm2)で37.9%の変換効率を達成しており,2022年にはセルを薄いフィルムで挟んだ構造に変更し,セルの平均変換効率の向上とセル充填率の改善を図ることで,軽量・フレキシブルな実用サイズのモジュール(面積965cm2)での変換効率32.65%を達成している。

今回,化合物2接合型太陽電池モジュールとシリコン太陽電池モジュールを組み合わせた積層型太陽電池モジュールに構造を変更することで,実用サイズモジュール(面積775cm2)での変換効率を33.66%まで向上した。

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