阪大ら,新構造デバイスによる深紫外光発生に成功

大阪大学と三重大学は,従来デバイスと全く異なる材料・構造の波長変換デバイスを提案・作製し,実際に波長229nmの深紫外光を発生することに成功した(ニュースリリース)。

これまで医療機関や公共機関・家庭での殺菌・消毒などの用途には,エキシマランプ(波長222nm)や深紫外光LED(波長265nm)が市販されているが,前者は効率が低く寿命が短い,後者は人体に有害なため応用範囲が限られるといった問題がある。

また非線形光学結晶を用いた波長変換による高出力深紫外光レーザーが産業用に用いられているが,これらは上記の用途には向かない。

これに対して波長210nmまで透明で高い光学非線形性と光損傷耐性を有する窒化アルミニウム(AlN)を用いれば,人体に無害で強い殺菌・消毒効果がある波長220~230nmの深紫外光を発生する小型で高効率な波長変換デバイスが実現できる。

小型・高効率な波長変換デバイスには主に強誘電体結晶が用いられているが,これらは深紫外光に対して不透明なため深紫外光発生に適用できない。

また従来型の波長変換デバイスでは分極の向きを光波の伝搬方向に短い周期で反転させる必要があり,深紫外光発生に必要な周期1um程度の分極反転構造を窒化物半導体の結晶成長で実現することはほぼ不可能だった。

これに対して研究グループは,窒化アルミニウムの分極の向きを垂直方向に反転させて積層した新規構造を提案し,三重大学の研究グループで開発された窒化アルミニウム極性反転積層構造を用いて実際に波長変換デバイスを作製し,第二高調波発生による深紫外光発生を試みた。

研究グループでは,結晶の極性が積層方向に反転されたAlN薄膜をコアとした光導波路によって深紫外光への波長変換が可能であることを見いだした。AlN極性反転構造は結晶成長技術により成膜され,これを用いて半導体の微細加工技術によって光導波路構造を形成し,AlN極性反転光導波路を作製した。このデバイスに波長458nmのレーザー光を照射したところ,波長229nmの深紫外光を発生させることに成功した。

研究グループは,この窒化物半導体極性反転積層構造は,第二高調波発生に限らず類似の構造で異なる波長や他の非線形光学効果を応用したデバイスを実現し,極性反転回数を増やすことで高効率化も可能なことから,光量子情報処理に必須のスクイーズド光発生デバイスの実現も期待されるとしている。

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