阪大ら,レーザー核融合燃料での水素の重要性を解明

著者: 梅村 舞香

大阪大学,核融合科学研究所,国立研究開発法人産業技術総合研究所,広島大学,イタリア学術会議,仏ボルドー大学は,レーザー核融合のプロセスで生成するプラズマに含まれる水素成分が,高強度レーザーとプラズマの振舞い(レーザープラズマ相互作用)に与える影響を実験的に検証した(ニュースリリース)。

レーザー核融合では,高強度レーザーを燃料カプセルに照射した際に,レーザープラズマ相互作用によって高速電子と呼ばれる高エネルギーの電子が発生する。

高速電子はレーザー核融合の爆縮初期には核融合燃料の先行加熱を引き起こす問題である一方,爆縮後期においては,効率的なアブレーション圧力発生への寄与も期待されており,高速電子の発生要因であるレーザープラズマ相互作用のメカニズムを評価,さらには制御することが非常に重要な課題となっている。

研究グループは,大阪大学レーザー科学研究所の保有する高強度レーザー激光XII号の照射により,直接照射型レーザー核融合の条件を模擬し,その条件下におけるレーザープラズマ相互作用に関する計測に成功した。

ターゲットとして水素を含むプラスチックであるポリエチレン(CH2)と水素を含まない単結晶ダイヤモンド(C)を用いることで,レーザープラズマ相互作用に対する水素の効果が明らかになった。

高速電子の生成に大きく関与する誘導ラマン散乱(SRS)と二電子崩壊不安定性(TPD)の発生は入射レーザーの散乱光を波長によって分光計測することによって得られた。「閾値」を超えると,特定の波長を有した散乱光が顕著に発生する。波長550~650nmの光はSRSに由来し,波長650~750nmにおける光は主にTPDに由来する。

さらに水素含有率に着目すると,Cに対してCH2において顕著にSRSとTPDが発生することが観測され,SRSに関しては15倍程度,TPDに関しては5倍程度,散乱光強度が増大することが明らかになった。これに伴って高速電子の発生量も顕著に増加することも観測された。

これらの現象は,プラズマに含まれる軽い水素がイオン音波の減衰に寄与し,イオン音波の減衰が電子プラズマ波の崩壊を妨げることで,間接的に電子プラズマ波を介した現象であるSRS,TPD及び高速電子の発生に好ましい条件を作り出すことを提示した。

これまで水素含有率の観点から燃料カプセル材を設計した研究は存在しないため,研究グループは,この研究で得られた知見を基に将来的なレーザー核融合の高性能化が期待されるとしている。

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