国立天文台(NAOJ)は,宇宙の膨張を支配する宇宙論パラメータの精度を向上させることに成功した(ニュースリリース)。
宇宙が膨張していることは十分に立証されている。しかし,宇宙の膨張速度を正確に測定することは困難。そのため,天文学者は正確な測定のための信頼できる目印となる天体を探している。
たとえば,明るさが一定のろうそくは,ろうそくまでの距離が遠くなるにしたがって暗く見える。同様に,天体も遠く離れるほど暗く見える。天体のそのものの明るさが一定でそれを知っていれば,観測された明るさをもとに天体までの距離を計算することができる。このような距離測定を可能にする,明るさが既知の天体を「標準光源」と呼んでいる。
研究グループは,超新星やクエーサー,ガンマ線バーストといった,標準光源となる天体のデータを解析するために,さまざまな新しい統計的手法を活用することで新たな研究分野を開拓した。このデータ解析は,国立天文台 天文シミュレーションプロジェクトが運用する中規模サーバを用いた。
距離が異なるいくつかの範囲では,それぞれ異なる標準光源を用いることが有効。つまり,複数の標準光源を組み合わせることで,宇宙のより広い範囲に渡る天体のデータを使い,宇宙論パラメータを絞り込むことに成功した。
この研究により,主要な宇宙論パラメータの不定性を最大で35パーセント減らすことに成功した。研究グループは,宇宙論パラメータがより正確に決まると,宇宙が永久に膨張し続けるのか,それとも最終的に収縮に転じるのか,という宇宙の将来を明らかにできると期待されるとしている。